筑波大学案内 2024
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38 政治という分野は日常意識することはない、あるいは意図的に意識しないようにされる傾向があるように思われます。しかし、私たちの生活は国内政治が定める予算や法律等の政策を基礎として成立しており、政治無しには生活が立ちゆきません。 また国内に限らず、国際政治も欠くことはできません。グローバル化が進行した現在では、一国に生じた変化はともすれば世界全体に波及し、私たちの日常生活にも影響を与えます。総じて言えば、現代社会に生きるのであれば好むと好まざるとにかかわらず、政治と生活とを切り離すことはできないでしょう。そのような生活の根幹をなす政治という営みを探求できる分野こそが、政治学主専攻であると私は考えています。 社会学類政治学主専攻は、「広く深く」学ぶことができる場所です。政治学のみならず法学・経済学・社会学等の授業を履修でき、多角的な視点から眼前の事象を分析する能力を身につけることができます。また3年次から始まる政治学主専攻のゼミは基本的に少人数で構成されるため、先生方は学生一人ひとりに対し手厚く指導をして下さるほか、学生間の距離も必然的に近くなります。ゼミで割り当てられる時間も多くなるため、積極的に議論に参加し自らの理解を深めていくこともできます。これは私大等の大規模なゼミにはない、政治学専攻の固有の強みと言えるでしょう。現代は多種多様な価値観やニーズが入り乱れ、私たちの生きる世界は絶えずその在り方を変化させています。その中で政治学を学ぶことは、変化する世界で生き抜く視座を見つけることに繋がるはずです。これを読んでいる皆さんが、少しでも社会学類に興味を抱いたのであれば幸いです。北沢 修(政治学主専攻) 社会学類で学ぶことができる社会科学は、研究対象が「人々の行動」であり、様々な社会問題を考えるうえで非常に有用です。1・2年次から専攻を絞る必要はなく、社会学、法学、政治学、経済学の4分野を幅広く学ぶことができます。4つの視点から人々の行動を考えることは、3年次に経済学主専攻を選択した後にも、多角的なアプローチを手助けしてくれることになるでしょう。 皆さんは「経済学」と聞いて何を思い浮かべますか?私が高校生の時は、「お金」や「株」について学ぶ学問というイメージを持っていました。また「数学が苦手」という理由で何となく敬遠してしまっている人もいるかもしれません。しかし、実際に学んでみると、その内容は多岐にわたっていることがわかります。例えば「最低賃金を導入すると社会にどのような影響を与えるか」といった社会的な問いについて、数式やグラフを用いて論理的に考えることができます。 また、少子高齢化や過疎化が進む現代において、地方経済の現状や活性化について考える地域経済論はとても魅力的です。こうした地域経済について考える場合、数学が苦手という人でも、問題の背景や地域の歴史を理解しつつ、その現状を分析することが可能です。 私は現在、企業経営や地域経済と計量経済学を学ぶゼミに所属しています。少人数を特徴とするゼミでは、学生同士や先生との距離が近く、様々な議論を通じて自分の理解を深めることができます。現代の経済や経営に関する様々な問題を考える機会が与えられており、自ら主体的に考えるなかで、多角的な視点を得ることができるのが魅力です。皆さんもぜひ、社会学類で経済学を学んでみませんか。山崎 くるみ(経済学主専攻) 「社会学とは何か」と聞かれたら、私は一つの答えとして「自分の色メガネを外すこと」と答えると思います。社会で起こったことを捉えるときには、人は無意識に何らかの「色メガネ」をかけて物事を見ています。それは自分の今までの経験や社会の雰囲気などから作られるメガネです。しかし、そのメガネを外してみると、自分が物事の一側面しかとらえられていなかったり、間違った見方をしていたりすることに気が付きます。このように、社会の問題(身近な問題)に対して「本当にそうなのか?」と疑問を持ち、その背景にある社会の構造や人々の意識などをみていくこと、これが社会学主専攻で取り組んでいく学びです。 私が社会学を選んだのも、ある疑問を持ったことがきっかけでした。大学での学部を選ぶ際に、ふと「貧困問題などを抱える人はどのような生活しているのか?」という疑問が浮かび、そうした人たちがどのような生活をしているのか知りたいと思いました。そこから社会問題を広く扱う社会学という学問を知り、現在に至ります。私は疑問を持った当初は無条件に「貧困から抜け出すこと=よいこと」と考えていましたが、勉強をしていく中で、貧困だから生活が豊かではない、楽しくない、という考えが一面的であることに気が付きました。このように、自分が関心を持つ社会問題に対して複眼的な見方ができるようになるのも、社会学の魅力です。 社会学主専攻には、様々なテーマを扱う先生方がいらっしゃり、多方面の社会問題を社会学的に学ぶことができます。あなたが自分の身の回りの社会問題に抱く違和感や疑問を、社会学主専攻で明らかにできるかもしれません。 「法律」を学ぶといってもさまざまな切り口があります。わかりやすいものでいうと、六法の条文を学ぶのがそれに当たると思います。しかし、条文を学ぶことだけが法律を学ぶことではありません。条文や判例などから、背後にある社会問題を汲み取ることこそが、法律を学ぶことの醍醐味だと私は思います。例えば、近年、少年法の厳罰化の議論があります。これは、厳罰化により、少年犯罪の抑止効果が期待できることが前提とされる議論でしょう。しかし、そもそも厳罰化する必要があるほど少年法は厳しさの欠けたものなのでしょうか。不起訴とされることもある成人の犯罪の場合とは異なり、14歳以上の少年が罪を犯した場合、原則として全ての事件が家庭裁判所に送致され、審議されます。家庭裁判所での判断により、少年の今後が左右される仕組みになっています。少年は、重大な罪を犯したと判断された場合にはそもそも成人と同じ刑事裁判を受けることになります。また、社会復帰に向けた更生・教育が行われる少年院に送致されることもあります。このように、条文の内容だけをみても少年法は決してやさしいものではないのです。 ここまでは法律についての話でしたが、少年が罪を犯すのは刑罰がゆるいからなのでしょうか。社会学の観点から少年犯罪を見ますと、近年、少年犯罪自体が減少傾向にあります。また、少年が犯罪や自殺などの逸脱行為を起こす背景には家庭環境・所属している集団からの離脱など、さまざまな要因があります。社会の課題を解決する手段の一つとして法律がありますが、課題を根本的に解決するためには、幅広い教養を身につけて、異なる専門分野の知見を結ぶ必要があります。条文から読み取れる社会の課題を、政治・経済・社会学の観点から、多角的に探求できることが社会学類・法学主専攻の魅力です。その楽しさをぜひ一緒に感じましょう。藤田 優香(社会学主専攻)IQBAL MD MUMIT(法学主専攻)

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