62農林生物学コース 槇嶋 快 当初よりゲノム編集技術を用いた品種改良に強い関心があり、農林生物学コースを念頭に入学しました。1、2年次には、我々をとりまく食や農業、環境に関する諸課題への様々なアプローチを学び、その学問の幅広さ、奥深さに驚かされました。そのうえで最先端技術を用いた効率的な育種は今後の諸課題解決に不可欠なピースの一つだと再認識し、作物の生理や具体的な開発について詳しく学べる農林生物学コースに進学しました。 私は高温ストレスへの耐性を付与できると考えられる遺伝子の同定を目指して研究をしています。所属研究室では慢性的な高温環境下においても本来の濃緑色を維持できる変異体を所有しています。しかしこの表現型の違いを生む原因となる遺伝子は未だ同定されていません。卒業研究では変異体と野生株を交雑した孫世代から表現型ごとに全ゲノム情報を取得し、これらを比較することで原因遺伝子の候補を絞り込みました。 今最も声を大にしてお伝えしたいのは、できる限り広い視野を持ってさまざまなことに積極的にトライしてほしいということです。一つの分野を突き詰めることもよいですが、その前にまずはどの分野を突き詰めるのか吟味するのも大切です。様々な分野の魅力や意義を体験することはその後一つの学問を究める時にも活きてきます。生物資源学類では幅広い学問に触れること、そしてそこで出会った学問を究めることの両方ができます。皆さんが生物資源学類で夢中になれるものに出会えることを期待していますし、確信しています。環境工学コース 飯田 大希 入学当初は品種改良やバイオテクノロジーなどに関心があり、生物資源学類へ進学しました。生物資源学類では様々な授業が開設されていましたが、1・2年次に基礎数学や物理学を学んでいく中で数理的アプローチを駆使して生物資源を追求していくことに興味が湧きました。そして、それらを学ぶことができる環境工学コースを選択しました。 卒業研究では、りんごの食感をレーザーの散乱度合いで非破壊的に計測する研究をしていました。りんごは貯蔵中に少しずつ柔らかくなっていきますが、多くの人はこの軟化を「美味しくない」と感じます。そこで、柔らかくなってしまったりんごを壊さずにそのままの状態で検出できないかと思い、この研究を始めました。実際に私が開発していた技術では、レーザー光がりんご内部でどのように広がっていくかを計測し、計測データと機械学習手法を組み合わせることで、りんごの硬さを推定することを目指しました。この技術を応用することで、他の果実や野菜の食感や内部で腐ってしまった個体の検出などもできます。レーザーなどの光学に関する知識は卒業研究まではほぼありませんでしたが、1~3年次に学んだ基礎知識を活用することでスムーズに学ぶことができました。 生物資源学類は農学に関連したあらゆる学問を幅広く学べる場所だと思います。私は最終的に環境工学コースを選びましたが、大学1、2年次は学期ごとに希望コースが変わるほど各コースには魅力が豊富にあります。ぜひ様々なコースの授業や演習を選択し、自分なりの興味関心を追求していってください。応用生命化学コース 太田 日菜子 大学入学当初から、現代人に不足しがちな栄養をより効率良く摂取できるようにしたいと考えていました。当時はより実用的な、いわゆる応用研究の分野に注目していましたが、1・2年次に授業や実習を受ける中でより基礎的な分野にも興味を持ち、生命現象を分子レベルで理解することがより栄養効率の良い食の開発につながると考え、応用生命化学コースを選びました。このコースでは、あらゆる生物に共通する普遍的な生命現象や、知識を実用的に活用する方法について学ぶことができます。 卒業研究では植物が鉄という必須ミネラルの吸収を制御するための情報伝達系について研究しています。鉄の吸収機構の1つ1つのステップについてはわかっていることも多いのですが、実際に遺伝子組換え実験等を行うと、予想した結果が得られないことがあります。そこで、鉄吸収に関わる情報伝達系全体を制御すると考えられている物質について、実際に全体を制御しているといえるのか評価を行いました。この研究によって、日本人女性が不足しがちな栄養素である鉄を可食部に多く含んだ作物の開発可能性がより高まると考えています。 生物資源学類では、1・2年次では農学に関する非常に幅広い分野について学ぶことができます。興味のあることにのみ取り組むのではなく、幅広い知識を身に着けることで、これまで見えていなかったものや新しく興味のある分野を発見することもできます。1つのことに囚われずに、挑戦することを忘れなければ、新しい出会いが学生生活を豊かに彩ってくれることと思います。社会経済学コース 山下 ひさ乃 「人」は食を守るために何を考えるのか、ということを知りたくて、私は筑波大学に入学しました。 私の関心は、農業のなかでも「人」にあります。これは、高校生のときフェアトレードの活動を取材したことで、人々が生産の実状を知ることが問題解決の原動力になると実感したからです。それが何故なのか、食を守る人は何を考えているのかを明らかにするために、農業を学びたいと思いました。 この「人」という関心は文系寄りで、私の高校の選択も文系です。一方、農学部は理系の学部とされます。この溝があるなか、生物資源学類では理系・文系で分けられてしまう弊害を感じず、自分の興味を活かして勉強や研究ができました。具体的には、生物学や物理学だけでなく、社会学や経済学など「人」を中心とした視点からも、農業を学べました。これは、学類のなかでも多様な研究分野があり、他学類の授業をとりやすい筑波大学のしくみがあったからです。また、つくばは農業が盛んな地域であり、学内外の活動を通して実際に働く農家の方々と交流できたことが、農業への理解に重要でした。開かれた学問領域を展開し、農業の現場と近いという筑波大学の特色は、私の成長に欠かせなかったと考えます。 大学時代は、好奇心と行動力があれば、なんでもできる時間です。どのような興味があっても、まだ興味がはっきりしていなくても、筑波大学ではそれを広げ新たな世界を見られると思います。皆さまが、自分らしく学ぶ4年間を過ごせるよう、願っています。
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