海野 颯花(社会学主専攻)行木 健人(政治学主専攻)高橋 健太(法学主専攻)塙 悠莉乃(経済学主専攻)26 「社会学」という言葉を聞いても、何をするのかよく分からないと思う人はたくさんいると思います。そもそも「社会」が何を指すのか、はっきりしない感じがしますよね。それはきっと社会学が色々な分野に広がっていることの表れだと思うのです。 働くこと、家族を持つこと、趣味を楽しむこと、科学技術を使うこと……私たちが行うことのほとんどすべてが誰かから影響を受け、あるいは誰かに影響しています。社会は人間同士のつながりからできているのです。嬉しいことや悲しいことはたびたびそのつながりから湧き出てきます。社会学はそのつながりのあり方を紐解いていく学問であると思います。例えば、みなさんはこれまでの人生の中で理不尽を感じたことはないでしょうか。部活の厳しい上下関係や男らしさ・女らしさ、貧困など、何かしら嫌なことはあると思います。あるいは、幸運を感じたこともあるでしょう。治安の良い国に生まれてよかった、困ったとき周りの人が助けてくれて解決した、などです。しかし、どうして私たちは嫌なことに遭遇したり、このような幸運に恵まれたりしているのでしょうか。その謎を解明するのが社会学です。私たちが誰かとのつながりの中で感じる疑問を私たち自身が考えることができます。これが社会学の楽しい所です。 筑波大学社会学主専攻には私たちの中で生まれる疑問を自分で解決することを手伝ってくれる環境が整っています。原則として、大学で開講される授業は全て受講可能なので、社会学類以外の内容も勉強できます。自分の可能性を広く持ち、やがて最も興味を持てるものに集中させていくことができる社会学類、そして社会学主専攻を進学先としてぜひ検討してください。 私は政治学を専攻しています。政治学に興味を持ったきっかけは、タイから日本に移住した叔母の経験です。彼女の話から、移民が直面する困難や文化の違いへの適応の難しさを知り、移民問題に対する関心が深まりました。 また、ドイツ人の友人との交流も、私の理解をさらに深めました。彼は、自分の家族が移民としてドイツに住み着いた背景や、ドイツの移民政策について話してくれました。これを通じて、移民問題は国際的な課題であり、多様な視点から考える必要があることを実感しました。 筑波大学は、こうした異文化交流を通じて多様な視点を学ぶのに最適な環境です。キャンパス内で多くの留学生と日常的に交流することで、異なる文化や社会背景を持つ人々の考え方や価値観を知ることができます。政治学主専攻では、移民問題も含めた専門的な授業が多く、国際政治学や比較政治学などを通じても移民政策の背景や課題を学ぶことができます。移民ばかりでなく、授業やゼミを通して得た知識をもとに、学生が各自の関心のあることがらについての考えを深めることができます。 私にとって政治学の学びは、タイ人の叔母やドイツ人の友人との出会いを通じて始まりました。そして、筑波大学という恵まれた環境で、多くの知識や経験を積むことができています。私は将来的には、国際機関や政府機関で移民政策に携わり、具体的な解決策を模索したいと考えています。筑波大学での学びと経験を活かして、移民問題に対する理解を深め、その解決に貢献できるよう努力していきたいと思います。 社会学類はとても欲張りな学部です。社会学、法学、政治学、経済学をまとめて学ぶことができる学部は日本の大学の中でもほとんど存在しないと思います。私の主専攻は法学ですが、私自身、法律は堅いという先入観がありました(その先入観を持つ人が多いと思います)。しかし、今は法学ほど柔軟な学問はないと考えています。例えば法律は自由に解釈することができますし、一人一人違った理想的な社会を支えるための法律を考えることもできます。さらには比較法学や法史学、法哲学など無数の分野が存在しており、ただ法律という概念だけが横たわっている世界ではないことを、法学を専攻して痛感しました。憲法のゼミで裁判傍聴に行った際には「法律は人を裁く」というイメージが強くなりましたが、自身で法律はこうあるべきではないかと考える際には「法律は人を救う」というイメージを抱きました。この2つのイメージは互いに共存するものであり、約4000年前の世界最古の法典からですら抱くことのできる面白さです。このように法学は非常に実用的かつ概念的とも言えますが、とても人間的な魅力をもっています。これは人の集まりである社会、人が作り運用する法、人が国を動かす政治、人と利益を調整する経済の全てに言えることだと考えています。 同時に2つのことを得ようとすると、中途半端に終わってしまい結局どちらも得ることができないという意味の「二兎を追う者は一兎をも得ず」ということわざがあります。大学での学びでは、もちろん一兎を得ることも大事ですが、社会学類で四兎を追ってみることで必然的に1つの物事を見る視点が4倍に広がることを実感することそのものに十分価値があると私は信じています。 皆さんは、大学での学びに何を求めていますか?私は、身近で生活に役立つ分野を深く学びたいと考えて社会学類に入学し、経済学を専攻しました。もしも私と同様に社会の仕組みを知り、生活に役立てたいのならば、経済学は皆さんにとって大きな助けとなることでしょう。経済を学ぶことで、日常の意思決定や将来のキャリアにおいて、より良い選択をするための基礎を築くことが可能となります。 実は、経済学は社会学類の専攻の中で、最も私たちの生活と切っても切り離せない「深い」関係にあると言っても過言ではないのです。例えば、夏休みに旅行をするかアルバイトをするかを迷っている時、旅行で得られる思い出や貴重な経験とアルバイトで得られる収入の価値とを比べるでしょう。選ばなかった選択肢で得られるはずだった価値を経済学では機会費用と呼び、非常に重要な概念となっています。このような経済学の考え方は実感を伴っていて理解がしやすく、実際に学んでみると想像よりもずっと親しみやすい学問領域であると私は思います。 経済学主専攻に進学して、私はゲーム理論と日本企業経営の成功の本質を考察するゼミの2つに所属しています。どちらも身近な話題や社会で注目された事例を取り上げ、皆で知識の深堀りや応用をして楽しく学んでいます。さらに、教室の中で議論を交わすだけでなく、「もの作りの現場」を見学したり、ゼミで得られた知識を実験・実践する機会も設けられていて、学生にとって何よりも有意義な時間となっています。 大学は、ただ理論を教わるだけの場ではなく、実社会での応用力を身につけるためのものです。皆さんも、社会学類で経済学の魅力に触れてみませんか?
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