豊橋技術科学大学 大学案内2026
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P R O F I L EYOSHINORI TAKEICHI■所  属 : 機械工学系 ■専門分野 : トライボロジー / 表面分析■学  位 : 博士(工学)(名古屋工業大学)■所属学会 : (社)日本トライボロジー学会 / (社)日本機械学会 / (社)応用物理学会新しい道を切り拓く研究者たち■職  名 :准教授 トライボロジーとは、物と物がこすれる「摩擦」、摩擦が続くと物が削れていく「摩耗」、それを防ぐための「潤滑」の三つに関する問題を総合的に扱う学問と技術です。滑りを良くするための潤滑剤や機械部品、滑りやすい材料や形といった、化学、材料、機械に関わる分野を中心に、幅広い領域で研究されています。宇宙空間で働く人工衛星、高層建築の免震、人工関節、フライパンのフッ素樹脂加工などにもトライボロジーが役立っています。 自動車のサスペンションなどに使われる「重要保安部品」の一つに、ボールジョイントがあります。パーツ同士のつなぎ目がおわん状の部品と金属球との組み合わせになっており、高い自由度で動くものです。潤滑剤として使われているグリースがうまく行きわたらないと、おわんと球がこすれて摩耗し、壊れて大事故を起こしてしまいます。滑りを良くする方法は経験則としては確立していますが、なぜその方法が良いのかはわかっていません。このままでは、新しい部品の開発ができないなどの問題が生じるため、機構を解明する研究が進められています。摩耗実験と電子顕微鏡などでの観察を繰り返し、グリースの種類による挙動の違いなどを調べている段階です。 部品の摩擦を小さくすることは、部品の損傷を防ぐだけではなく、伝達の途中で失われるエネルギー量を減らすことにつながります。さまざまなところで、トライボロジーは、エネルギーの損失を防ぎ、部品を長持ちさせるという、環境負荷の低減を担っているのです。摩擦や摩耗によって無駄になっている金額はGDP対比3%におよぶという試算もあります。どれだけ環境負荷を下げられるかがトライボロジーの使命であり、摩擦・摩耗の低減だけではなく、摩擦面に使える生物由来の新しい材料の開発も進められています。中でも、竹を主原料にした黒鉛を使った材料の開発は、放置竹林の問題解決にもつながることが期待されています。4つの強み12事故を防ぎ、環境負荷の低減を担う「トライボロジー」研究テーマ摩擦・摩耗・潤滑を総合的に扱うボールジョイントの滑りの研究環境負荷の低減を担う機械工学系竹市 嘉紀高い研究力03

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