マルトリートメント予防の科学子どもに怒鳴る、大人の都合で一人で留守番させる、目の前で夫婦ゲンカをする。こうした大人から子どもへの好ましくない関わりは「マルトリ(マルトリートメント)」といいます。ハーバード大学との共同研究で、こうしたマルトリが、子どもの脳に負荷がかかり前頭前野や脳梁の縮小などを引き起こすことがMRIを用いた研究でわかりました。物理的に脳が傷つくのです。その影響は大人になっても続き、そのうち3分の1の人たちは、我が子を虐待するといわれています。負の連鎖ですね。この連鎖を断ち切るためには、子育て困難に陥ってマルトリをしてしまう親への寄り添いとケアが不可欠です。研究成果を社会実装することも、私たちの務め。地域社会みんなで親におせっかいをする共同子育て「とも育て」を提言し、啓発活動を行っています。虐待の連鎖から「とも育て」の連鎖へ友田 明美子どものこころの発達研究センター 教授脳の構造変化は「心の軌跡」「心」はどこにあるのか? どのようにして生まれるのか? 技術や科学が進んだ現在でも、「心」が生まれるしくみは謎に包まれています。それでも我々の「心」が、脳の損傷や脳に作用する薬物に影響されることから、「脳」が心の形成に深く関わっていることは間違いありません。私たちは、先進の神経回路の可視化技術や活動操作技術、そして生体分子発現解析技術を駆使して、脳の構造と分子分布を明らかにしながら、「心」が生まれるしくみについて研究を行っています。動物をさまざまな条件で訓練し、脳内の様子を調べることで「心の痕跡」を捕らえようという試みですが、さて、「心」の実体としくみに迫れるのでしょうか。そして、私たちの人間理解を変容させたり、より豊かな人生の形成に貢献することができるのでしょうか。興味は尽きません。「心」のしくみに迫る「脳」の研究深澤 有吾医学科 脳形態機能学 教授人もまちも健康に私は県最西端の高浜町で地域医療に従事しています。2008年の赴任当初、医療への関心が決して高いと言えなかった高浜町民。主体的に住民らが医療について考える場を作りたいと、医師不足解消や健康増進といった医療課題に地域が参加する手法で取り組んでいきました。“まちづくり系医師”のチャレンジ井階 友貴医学科 地域プライマリケア講座 教授感染症と闘う医学の最前線COVID-19をはじめとする感染症では、無症状や軽症で済んでしまう人と、重症化する人がいます。その違いはどこにあるのか。私の研究では、免疫系細胞から分泌されるタンパク質「サイトカイン」に着目しています。高齢者や基礎疾患、ストレスのある人は、サイトカインが過剰産生される「サイトカインストーム」が誘導されやすく、これがCOVID-19感染症の重症化の根源に重症化を防ぐキーワードはサイトカインストーム岩﨑 博道医学部附属病院 感染制御部 教授WELCOME 16UNIVERSITY OF FUKUI
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