福井大学 VIEW BOOK 2022
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科学に支えられる名窯世界屈指の名窯と評されるフランスの国立窯「セーヴル」。その陶磁器製品が高品質を保っているのは、良質な原料、熟練の職人技、高い芸術性に加え、組織内に化学者を擁して原料や製法の研究を重ねてきた歴史があるからです。私は元々、19世紀のヨーロッパにおけるジャポニスム(日本趣味)の研究をしていたのですが、当時の他の窯が日本に関心を向ける一方で、セーヴルは中国の景徳鎮磁器に着目し、化学者がその原料や製法を化学的に分析し、模倣に挑戦した史実に関心を持ちました。この模倣の過程では、表現の幅を拡げる数々の発見があったことが現地調査で分かりました。セーヴルのチャレンジ精神は今も変わらず、古きを守りつつも原料調合法・製法の多くを内部で開発し、新製品を発表し続けています。地道な科学の積み重ねが生む唯一無二の芸術に、これからも目が離せません。「科学」と「芸術」のイイ関係今井 祐子国際地域学部 准教授PBLを通じた第2言語教授法そもそも言語は、他者に自分の考えや思いを伝えるために発生したものです。従来の個人学習ではそうしたコミュニケーションが起こらず、言語の習得に非効率的でした。言語を学ぶのではなく、言語で学ぶ。このような考えから、課題を発見し、話し合い、解決方法を探るPBL(Project-Based Learning)を通じた第2言語の教授法を研究しています。英語を用いるPBLを実施し、学生に身についた力が授業内外でどのように活きているかを、継続的かつ長期的に調査・分析中です。学生の皆さんには、英語の習得をゴールとせず、英語を使ってチームで話し合い、一つのものを作るなかで、プレゼンテーション能力やチームワーク力などプラスアルファの力を身につけてほしいと願っています。使って身につく第2言語クリストファー ヘネシー国際地域学部 講師比喩によって成長する多義語日本語の「甘い」と英語の「sweet」は、常にイコールだとは限りません。両語とも「砂糖をなめた時の味」が基本になりますが、日本語では「採点が甘い」「ブレーキが甘い」など、「甘い」がネガティブな状態を表すこともあります。私はこういった複数の意味を持つ「多義語」に着目し、人間の認知能力から言葉を考察する“認知意味論”の考え方を用いて、多義語の実態を解明しよ「採点が甘い」の「甘い」とは?皆島 博国際地域学部 教授都市から失われる「遊び場」子どもは生来遊ぶ性質を持っており、主体的な遊びを通して生きるために必要な様々な力「非認知能力」を身につけていきます。しかし、今その「遊び」が危機に瀕しています。2017年に福井市内の小学校で行った調査で、平日の放課後に遊ばないという子どもが15%以上いることが分かりました。遊び環境の悪化は、都市の急激な変化によって引き起こされています。さらに現代の子どもたちは学校や塾、習い事などで忙し遊ばなくなった子どもたち粟原 知子国際地域学部 講師WELCOME 46UNIVERSITY OF FUKUI

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