School of Global and Community Studies 国際地域学部途上国の環境利用調査古来、人々は「土地」に根ざして暮らしや文化を築いてきました。私は現在もそうした生活を残す南アジアの途上国を現地調査し、地形や水の条件と農業的土地利用などの環境利用、またそれに関わる慣行や制度についての調査研究を行っています。現地に到着していつもまずやるのは、景観や住民の日常行動、道具などの綿密な観察です。五感をフルに使うと、言葉が十分にわからなくてもその「土地」に対する人々の働きかけの内容や目的はずいぶんと理解でき、過去の状況も推測できるようになります。人々の暮らしぶりを解き明かし、新しい経済の活路やそれを円滑に進めるための制度作りの提案を行う一方で、集落間の共存の知恵や幸福の在り方など、こちらが住民から学ぶこともあって、発見の多い楽しい交流が続いています。「土地」と生きる人々の暮らし月原 敏博国際地域学部 教授うとしています。例えば「甘い」という言葉は、「甘い香り」「甘い音色」など“味覚”以外の感覚の比喩にも使われ、多義語になっていったと考えられます。言葉同士の共通点を見出せれば他の言語にも研究を広げることができます。日本語や英語だけに留まらず、幅広く言葉の意味が派生する仕組みの探求はおもしろいですよ。く、自由な時間を持てません。福井大学では、隣接する林でプレーパーク※と呼ばれる地域の子どもたちに遊び場を提供する活動を定期的に行っています。子どもたちは遊ばなくなったのではなく、変化する環境に適応しただけなのかもしれません。自然の中で自由に遊びを創造して思い切り楽しむその表情は、どの子も本当に輝いて見えるものです。※プレーパーク・・・北欧デンマーク発祥。子どもたちが自然の中で、自然のものを使って自由に遊びを作り出せる遊び場のこと。福井の「幸福度」を解剖してみる「ちょっと」「大幅に」「とても」・・・。数値で明確に表すことが難しい人間の主観的な感性を分析し、物理的なデザインやシステムに活用するのが「感性工学」です。対象には、「嬉しい」「悲しい」、そして「幸せ」といった曖昧な感覚も入ります。福井県は全47都道府県幸福度ランキング※1第1位ということで、私はランキングの指標になる「待機児童率」「学力」などの65項目のデータを新たに分析。得られた値を「ラッセルの円環モデル※2」に当てはめました。すると、やはり福井県は「幸福」な感情のポジションに収まることが分かりました。同じく各都道府県の現状を分析すれば、「幸福な県」「満足度の高い県」など、各県が望む姿に近づくために足りない部分を補う政策立案にも繋がるのではないかと考えています。幸せって、なんだろう?井上 博行国際地域学部 准教授※1 (一財)日本総合研究所※2 x軸に「快-不快」、y軸に「覚醒-眠気」の数値を配して情動を評価し、様々な感情を推定するモデル図 TO MY LAB47UNIVERSITY OF FUKUI
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