福井大学 VIEW BOOK 2023
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准教授岸俊行KISHI Toshiyuki教育学部(専門分野:安全教育/授業研究/インストラクショナルデザイン)09現在の学校教育には、教育効果がはっきりとわからないまま経験的に行われているプログラムが少なくありません。その現状に対して、効果を科学的に検証できる教育プログラムの設計を目指すのが教育工学です。たとえば私の研究では、水難事故を実際に体験してもらう授業を行い、子どもたちの危険への意識がどう変化したかを調査しました。すると、従来の教室での安全学習では、水難事故に対する危険意識が授業の直後にしか高まらないのに対して、体験的な学習の場合、その意識が長期間維持されることがわかりました。その一方で、水難事故への危険意識は長期間維持できても、他の危険に対する意識は変わらないことも明らかになりました。学問分野から見る学問分野効果的で効率的な教育プログラムの設計こうした結果を得て初めて、子どもたちが水難事故への危険意識を高めるとともにその意識を一般化できるようになるためには、体験授業に加えて事後教育も必要であることがわかるのです。日本の学校教育のさまざまな問題点が社会変化とともに浮き彫りになるいま、確実に効果があり、かつ効率的で魅力的な新しい教育プログラムを設計することは喫緊の課題です。教育工学の重要性を広く知ってもらうとともに、この分野の専門家を育成する仕組みを作れればと考えています。教育心理学/教育工学水難事故の体験授業から導ける、理想の安全教育とは

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