福井大学 VIEW BOOK 2023
12/76

UNIVERSITY OF FUKUI VIEWBOOK 2023准教授西住裕文NISHIZUMI Hirofumi医学部医学科 (専門分野:分子生物学)10散歩の途中で、いい香りに誘われたり、焦げたような匂いに危険を察知した経験があるのではないでしょうか。私たちは10万種以上の匂いを嗅ぎ分けられることがわかっています。嗅覚では、鼻の奥にある嗅覚受容体に匂い分子が結合し、脳に匂い情報を送ることで、“匂い”を認識しているのです。嗅ぐ匂いの種類によって好き・嫌いの感情が生まれますが、私たちの研究室では、この匂いの質感がどのように決まるのかを、分子・神経回路レベルで理解しようと研究に取り組んでいます。学問分野刷り込みによる匂いの記憶卵からかえった直後のヒナが、初めて見た動くものを親と思って後追いする行動は、「刷り込み」として広く知られています。私たちは同様の刷り込みが嗅覚でも起こることを最近発見しました。生後1週間のみに嗅神経細胞で発現するタンパク質により、この嗅いだ匂いに対応した特定の神経回路が増強され、刷り込みが起こるのです。さらに、たとえその匂いが生まれつき嫌いな匂いであっても、母親から受ける愛情とその匂いがリンクすると、心地良い体験として刷り込み記憶されるのです。匂いと脳の関係を探求することで、人の意識や感情がどのように作られていくのかを解明するヒントが得られるのではないかと、期待しています。脳科学私たちは“匂いの好き・嫌い”をどのように決めているのか

元のページ  ../index.html#12

このブックを見る