福井大学 VIEW BOOK 2024
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知を極める面白さ「論理の極北」への旅がいつか「実用」に帰結する日 私の専門は、代数学、特に「超リー代数」です。代数学は、例えば整数や方程式を研究する数学の一分野で、正多角形や正多面体の対称性を記述する「群」も代数学の重要な研究テーマです。「超リー代数」は「群」と類似の概念で、物理学で注目されている超弦理論の対称性を記述することに使われます。私はこの「超リー代数」を、主に、コンピュータを道具として研究を行っています。では、このような研究は実用的な工学に役立つのでしょうか? それはわからないです。正確には「今のところ」わからないです。数百年にわたり研究されてきた整数論が暗号技術に応用され、微分積分が現代の工学に欠かせないように、この研究がいつか実用に供される日を迎えるかもしれません。こうした「論理の極北」の研究を通して、数学から工学へと広がる地の領域を旅しながら、その知がいつかこの社会に新たな光をもたらす、そんな日を夢見ています。 エアロゲルとは、例えば豆腐を乾燥させた高野豆腐のようなもの。強度に優れたアラミドをゼリー状にし、超臨界流体技術を用いて溶媒を乾燥させると、小さな穴が無数に開いた多孔性の物質=エアロゲルが生まれる。極めて軽く、高い断熱/吸音性といった特性を有すエアロゲルには、これまで固体状のものしかなかったが、これを「糸」状にすること。それが私の研究テーマです。糸/繊維にすることで、宇宙服から航空機、建築資材まで応用の幅は一気に広がる。その優れた断熱性能は、エネルギー消費の抑制に貢献するものになるかもしれません。この研究は、国内ではおそらく福井大学だけ。誰も見たことがない未来へ――そんな夢が広がる研究です。08UNIVERSITY of FUKUI VIEWBOOK 2024工学部 応用物理学科古閑 義之 教授KOGA Yoshiyuki専門分野:数学(代数学)大学院工学研究科博士前期課程2年次■ 平良 さんTUJI Taira工学部超臨界技術から生まれる「エアロゲル繊維」はどんな夢を未来に描くか地球全体の基盤にかかわる工学の世界

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