福井大学 VIEW BOOK 2024
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光を受け静かに発色する構造色繊維の青はどんな青よりも青い膨大な廃水を生み出す染色加工水資源を守る画期的な新技術その実用化に挑む持続可能な幸せを求めて クジャクの羽やタマムシの色は、顔料によるものではありません。微細な膜や結晶/液晶構造に、光が反射することで発色した色=構造色です。絵を描くのが好きだったこともあり、研究室で出合った構造色の輝きに惹かれました。食物繊維セルロースを液晶化すると螺旋状の構造が形成される。その螺旋の巻き方や間隔を変えていけば、そこにはさまざまな構造色が現れてきます。このセルロース液晶を糸状に加工(紡糸)すれば、決して色あせることのない繊維をつくることができる。私が取り組んでいるのはそんな課題です。これまで成功したのは青い糸。光を受け発色するその青はとても美しい。それは染色加工不要の環境に優しい色。繊維の新しいカタチです。 身の回りにあるファッション用品やカーテンなどのインテリアはすべてさまざまな色で染められていますね。これら繊維を染めるには大量の淡水が必要で、その量は製品になる繊維の100倍以上。世界全体では年間約5.8兆リットル、全工業廃水汚染の20%が染色の廃液だと言われています。ちなみに人が利用しやすい形で地球上に存在する淡水は、海水を含めたすべての水のわずか約0.01%。人類にとって水資源はとても貴重なため、染色工程での水削減はとても重要な課題です。私はこのテーマに2つのアプローチで挑んでいます。一つは「水レス染色加工技術」の開発。水の代わりに超臨界状態のCO₂を用いて繊維を染め、防臭や撥水、抗菌といった機能性加工も付与できるようにするのです。もう一つが「構造色繊維」の開発。染料で色を付けるのではなくクジャクの羽のように光を反射し発色する、染色不要の特殊な構造の繊維です。人々の未来を少し良い方向に変える――そんな一歩となる研究に取り組んでいます。09大学院工学研究科博士前期課程1年次西尾 萌花 さんNISHIO Moekaカーボンニュートラル推進本部廣垣 和正 准教授HIROGAKI Kazumasa専門分野:繊維材料/染色化学/コロイド化学

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