福井大学 VIEW BOOK 2024
7/62

「魚」を与えるのではなく「釣り方」を教えるヨルダンに伝える日本の教育持続可能な幸せを求めて 「動物介在教育」って知っていますか? 私は、動物介在教育が子どもたちの心や学校生活にどんな影響を及ぼすのかを、卒業研究のテーマとしています。このテーマを選んだのは、授業で学んだアニマルセラピーがきっかけでした。自閉症の子がホースセラピーによって発語が促され、心が開いていく事例を知り、動物が子どもたちに及ぼす力に興味を持ったからです。獣医師さんと連携を取り、小学校を訪問し、動物を中心にした子どもたちのやりとり、先生と子どもたちのやりとりを観察しました。まだ研究の途中ですが、動物がいることでクラスの雰囲気は確かに変わっていく様子がわかってきました。卒業までにさらに研究を深め、将来的には障害のある子どもたちの教育に生かしていきたいです。卒業後は、特別支援学校の教員になることが決まりました。4年間の学びと研究の成果を携え、子どもたちとともにこれからの人生を歩んでいきたいと思います。 私がヨルダンの教育省と関わるようになったのは国際協力機構(JICA)を通じて学習環境の改善を依頼されたからです。ヨルダンは、小学3年生で「九九」の例えば7×8の正答率は30%程度と低い。教育の現状を調査し改善方策を考える、それが私に課せられた使命でした。福井大学には「教職大学院」があり、教員教育では全国のトップランナー。公立学校の教員や、教育行政に携わった経験のある私に白羽の矢が立ったわけです。現地に行くと、やはりいくつかの問題がありました。特に「教師主導の授業」によって子どもたちの学習への意欲が大きく阻害されている。そこで日本流の「子どもが主役の授業」を、その考え方から徹底して伝えようと決意。ヨルダンと日本を行き来しながら校長先生や先生たち、教育行政の担当者の研修を行っています。ヨルダンの先生たちは「日本はIT機器を取り入れているから学力が高い」と考えていましたが、それは違う。情報機器やお手軽な教育プログラムの導入ではなく、全ての子どもたちにとってのwell-being(幸福)を根本から考え、ヨルダンの教育関係者が協働し試行錯誤しながら、より良い状態へスパイラルループを回す――そのような「当事者意識」と「方法」をこそ伝える活動を続けています。研修中に、「そうか、キヨは我々に魚の獲り方を教えようとしているのだな」。一人の行政官が口にしたその言葉は、私がやっていることに対する何よりの賛辞だと思っています。05教育学部 学校教育課程 初等教育コース特別支援教育サブコース4年次田村 茉紘 さんTAMURA Mahiro教育学部清川 亨 教授KIYOKAWA Toru専門分野:教師教育/学校マネジメント動物のチカラは子どもたちの心にどんな影響を与えるか

元のページ  ../index.html#7

このブックを見る