福井大学 VIEW BOOK 2024
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学んでいる医学と趣味のITを活かし社会の役に立つ 日本では毎年約5千人が交通事故などで脊髄損傷を受傷し、さらに10万人以上が過去の損傷によって麻痺など重度の後遺症を患い、車いすや寝たきりでの生活を余儀なくされています。一度損傷すると再生できないとされてきた脊髄ですが、急速に発達してきた再生医療によって回復への道が拓かれつつあります。損傷した脊髄の再生方法には、胚性幹細胞やiPS細胞を用いたものがありますが、私が取り組んでいるのは「骨髄由来間葉系幹細胞」移植によるもの。脊髄損傷した当人の骨盤から幹細胞を取り出し培養し静脈から投与する。すると幹細胞は損傷箇所に集まり、栄養因子を生成補給しながら脊髄を再生していくのです。20年ほど前に発見されたこの機序が、その後15年の歳月を経て臨床応用の段階にまで進んでいます。私の目下のテーマは、この治療法を保険適用できるようにすること(現在は期限付承認)。一日も早く、後遺症で苦しむ10万人の患者さんに希望の光を届けたい。そんな思いで取り組んでいます。 高校を卒業してから福井大学に入学するまで、3年間の空白期間がありました。何をしていたかって? 何もせずブラブラしていました(笑)。将来何をしようか、何になろうか? …そんなことを考えながら、いろんなところを旅していたんです。その間インドに2カ月ほど滞在しました。そこではガンジス川の河畔で火葬をしていて、「死」がとても身近にあった。街角では病気を患っている人をたくさん見た。そして日本に帰06UNIVERSITY of FUKUI VIEWBOOK 2024医学部 医学科中嶋 秀明 准教授NAKAJIMA Hideaki専門分野:ライフサイエンス/整形外科学 脊椎脊髄外科医学部「回復不可能」とされてきた脊髄損傷の患者さんに希望の灯をともす医療の光を格差なく広く深く届けるために

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