富山大学 理学部 学部案内2019
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研究者レポート13 RNAの研究が白熱しているのをご存知だろうか。内藤さんが所属する井川善也研究室では、松村茂祥講師の研究成果が2016年にScience誌に掲載されたことでも話題となった。 ところで、RNAとは何だろうか? 私達の体内では、DNAに記録された遺伝情報をもとにタンパク質が作られる。その際、DNAから情報を受け取りタンパク質へ渡す「情報の仲介役」を担うのがRNAだ。しかし近年の研究で、RNAは単なる仲介役ではなく、多彩な機能を持つことが分かってきた。アミノ酸の並びの違いによって、皮膚や酵素のように異なる役割を果たすタンパク質と同様に、RNAもその塩基配列や組成を変えることで、様々な機能を持たせることができる。これを「機能性RNA」という。 内藤さんは、このうち光る機能を持つ「蛍光RNA」を扱っている。まず、タネとなる蛍光RNAをコピー(増幅)して大量に作る。この時にわざと元の塩基配列を変えるようなエラーを入れ込む(変異を加える)ことで、多種多様な蛍光RNAが出来る。その中からより強く光る蛍光RNAを選別して次のタネにする。変異を加えた増幅、選別の過程(システム)を何度も繰り返し、機能性RNAを改良させていく。これを「RNAの進化」と呼ぶ。内藤さんは「蛍光RNAの進化を効率的に行うシステム」を開発している。 より強く光る蛍光RNAがあれば、実験時に特定のRNAを可視化して追跡できる。このシステムの研究が進めば、基礎科学の進歩はもとより、大手企業が乗り出している次世代の薬、核酸医薬品の開発などにも役立つだろう。こうした応用が期待される最先端の基礎研究に日々励んでいるのが、内藤さんだ。■輝く研究人、内藤卓人 内藤さんは修士1年の時、「RNAスイッチ」を作り、日本生化学会北陸支部大会で発表した。機能性RNAの中には、生物の化学反応を手助けする「酵素RNA」があるが、RNAスイッチをONにすると、この酵素RNAは通常通り働き、逆にOFFにすると働きが抑えられる。これを使えば、化学反応の進む速度を調整できる。この発表で内藤さんは学生最優秀講演賞に輝いた。 実験にはトラブルが付き物だが、柔軟な思考力で乗り越える。まずは自分で原因を追究し、自力でも解決できない時は、より良いアイデアや技術を求めて、研究室の先生や仲間に相談する。この積み重ねが研究成果につながっている。 「好きだから続けられています」。研究には内藤さんにとっての‘好き’が詰まっている。現在の研究には、以前から興味があったものづくりの感覚があり、高校時代から好きな化学・生物を組み合わせた内容でもある。研究では0.5μℓから測れるマイクロピペッターを用い、繊細な作業をする。手先も器用な内藤さんの得意分野である。 日々の積み重ねと内藤さんの人柄、素質が相まって、様々な成果を上げ、評価されているのだろう。研究者に求められる大事なものを教えてもらったように感じた。■内藤さんの夢 「蛍光RNAの進化システムを構築し、実行させ、今よりも優れた蛍光RNAを完成させたい」。これが内藤さんの、研究に対する展望である。最後に、後輩へ一言頂いた。「自分の好きなことをとことん追求してください!」インタビュアー内藤 卓人研究者レポート〈ないとう たくと〉大学院理工学教育部修士課程化学専攻2年出身地:山梨県趣味(マイブーム):グルメ探索好きな食べ物:魚介系ラーメン(ラーメン エアーストリーム)、パン好きなアーティスト:andymori、青葉市子理学部の学生は、どんな研究をしているのでしょうか? ここでは、学生が先輩たちに研究内容をインタビューし、その内容を分かりやすく紹介した記事を掲載します。マイクロピペッターで作業する内藤さん学生による学生のための̶理学部の若き研究者たちの最新情報を公開̶ミクロな世界のモノづくり!RNAって?

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