富山大学 医学部 2019年度学部案内
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免疫力が著しく低下し肺炎や悪性腫瘍で死亡するエイズ(後天性免疫不全症候群 AIDS)の流行が世界の人々を恐怖に陥れています。その病原体がウイルスであることがわかり,現在そのウイルスに対する特効薬あるいはワクチンの開発が急がれています。病原体が発見され,そしてその治療法が判れば病気はなくなるのでしょうか。皆さんの中には,昭和55年(1980年)にWHOが天然痘の根絶宣言を出したことを記憶していて,「YES」と答える人がいるでしょう。一方,今から100年余り前に結核菌が発見され,その特効薬が出現してから約半世紀にもなるというのに,いまだに結核症の患者さんが苦しんでいるのを知っている方は「NO」と答えるでしょう。天然痘との戦いにおいて,人類が勝利をおさめることができたのは,有効なワクチンが開発されたこと以外に,いくつかの有利な条件があったからなのです。すなわち,ヒトの天然痘はヒト以外には伝染せず,また,感染した人は必ずあの天然痘特有な外見からわかる症状を示すので,患者は発見され,届出と隔離が徹底されました。その結果,それ以上の伝染を阻止し,ついに根絶することができたわけです。結核症の場合はどうでしょうか。天然痘と違って,結核症では病原体を身体に有していながら,特有な症状を示さず,見かけ上は健常者と区別できない人達がいるのです。このような人達では,特効薬があってもそれを使用する機会を逃がしてしまうことになります。天然痘と違って,エイズでも結核症の場合と同じように,病原体を有しながら特有な症状を示さない人達が,さらに伝染を広げていることがわかっています。このような場合,医師を訪れた患者さんを治療しているだけでは,その病気をなくすことはできないことになります。外見は異常ないようでも,実際は病気にかかっている人達を発見(早期発見)したり,あるいは現在健康でもそのうち病気にかかる危険性の高い人達が,その病気にかからないように予防したりすることが必要となってくることがおわかりになるでしょう。人間の生活の場である社会で,病気の早期発見や予防の方法を研究し,それが実際に行えるようにすることが社会医学に期待されているのです。 伝染病を例にとりあげて社会医学について説明しましたが,高齢化社会が進む中で,がん,心臓病,脳卒中などの生活習慣病も重要な社会医学の課題となってきています。本学の社会医学系の講座でも,富山県下の保健所等や医師会と協力しながら,この方面の調査,研究をしています。病院への来院患者ではなく,それぞれの地域の住民を対象に健康診断をして,がんや心臓病の早期発見の方法を検討したり,食生活の改善や禁煙を指導して,その健康への効果を調査したりしています。これらのことを地域で実施するためには,8社会医学の立場から環境と疾病エコチル調査サマーフェスタGUIDANCE
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