電気通信大学 大学案内2020
5/60

横井浩史教授鎌田舞花さんHiroshi YOKOI大学院 情報理工学研究科 機械知能システム学専攻Ⅱ類(融合系)先端ロボティクスプログラム教授先端工学基礎課程 4年徳島県立城ノ内高等学校 出身Maika KAMADAヒトや生物そのものを工学的視点から科学することに始まり、ヒト・機械および社会と機械の自然なインターフェースやそれらの融合技術に関する探求を行う。博士後期課程8名、博士前期課程16名、研究生7名、学域生9名が所属。研究キーワード:筋電義手、筋電センサ、サイバネティクス、サイボーグ、触覚フィードバック、脳科学、脳機能評価、バイオフィードバック、パワーアシスト、ブレインマシンインターフェース、リハビリテーション、ロボット工学、多点電気刺激、脳活動解析研究室概要横井 私達の研究室のテーマは「ヒトと機械の融合技術」です。これからの社会では、機械の機能が向上し、さまざまな形で人の生活に機械が入り込むようになる。そうなった時に〝人間と機械が共同して動けるような社会〟をどうやって実現すればいいか、というようなことを研究しています。私自身は人間の運動関係の信号を取り出し、機械を動かすような技術を中心に研究しています。その1つの例が、彼女の研究にも使われている「筋電義手」です。鎌田  私は「筋電義手の評価・測定」ということをテーマに研究をしています。この研究室を選んだのは「人と関わるような研究がしたい」と思っていたところに、授業で横井先生の筋電義手に関する研究を知ったからです。入学時はメディアアートに興味があったんですが、だんだんと「『大学の研究でしかできないこと』をやってみたい」と思うようになりました。私の中ではメディアアートも筋電義手の研究も「人と関わる」という点では一緒でしたから。横井 研究はとても大変だったと思います。実験の回数がまず、これまで研究室では経験したことのない数でしたからね。鎌田 筋電義手を使った30分~1時間の測定実験を1年間で145回行いました。でも、途中で行き詰まることがあっても、とりあえず目の前の実験を進めていくしかない。そうする中で、答えを探すことができたのが良かった気がします。ただ、機械系のことを全然勉強しないまま方向転換してこの研究室に入ったので、その点では苦労しました(笑)。横井 実験と同時に、筋電義手そのもののメカニズムを知り、修理をできるようにならなくてはいけなかったからね。またこの研究室は、医学や生理学の分野の知識も必要となる。「電気」という言葉もここでは神経や筋肉の信号のこと。研究室内では脳科学の専門用語や、大腿直筋、二頭筋という人体構造に関する言葉が飛び交っています。所属している学生の研究も多岐にわたっていますしね。鎌田 でもその分、何か疑問点が発生すると、同じ研究室のそれに関わる研究をする人に聞くことができました。そしてみんな的確な答えを返してくれるんですね。とてもいい環境でしたし、1年間で幅広い知識が身についた気がします。横井 また、私達の研究は被験者の方々の「障害」に向き合わなくてはいけない。研究を進めていく中で、被験者の方との関わり方や、1人1人が研究に取り組む姿勢も問われていくことになる。そういう点はどうでしたか?鎌田 「筋電義手」や欠損の障害を持つ方への印象は大きく変わり、とても身近になりました。研究室に入る前は欠損者の方と実際に関わることもなかったですから。卒業後はシステムエンジニアとして働くことになるんですが、学んだことを活かすのは自分次第。この研究室で経験したさまざまなことを、将来役立てていきたいです。横井 研究というのは自分で問いを作り、そこに結論を出す。つまり本来〝ものを考えること〟なんですよね。問いをわざわざ作ることは、生物としては必要ないことなのかもしれない。でもそこに回答を出すために考えるのが研究だし、それができるのが研究室ですから。ここでの経験をぜひ、活かしていってください。「ヒトと機械が共同して動ける社会」の実現をさまざまな方向から探っていく筋電義手がより良くなるための評価・測定方法を筋電義手の開発研究のためには、重さや機能性、使い心地など使用者の評価を測定し、それをもとに改良していくという工程が必要不可欠。その「評価・測定のための基準」をどのように設定したら良いかを、145回の実験を通して探っていった〝大学でしか学べないこと〞をやりたい。それがこの研究室を選んだ理由です〝研究〞とは、ものを考え続けること。それをできるのが、研究室なんでしょうね5

元のページ  ../index.html#5

このブックを見る