電気通信大学 大学案内2020
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牧 昌次郎准教授東 智也さんShojiro MAKI大学院 情報理工学研究科基盤理工学専攻Ⅲ類(理工系) 化学生命工学プログラム准教授先進理工学科 生体機能システムコース4年東京都立武蔵高等学校 出身Tomoya AZUMA有機合成と生物機能の人為モデル化を基軸として、ホタル生物発光をモデルとした人工発光系の創製及び急性Tリンパ芽球性白血病の創薬研究を行う。研究員2名、博士後期課程1名、博士前期課程3名、学域生2名が所属。研究キーワード:近赤外(NIR)発光、アカルミネ®、トケオニ、TokeOni、センパイ、seMpai、化学発光、可視化、癌、貴金属還元触媒、蛍光、再生医療、発光基質、発光酵素、パラジウム水素化触媒、標識材料、ホタル生物発光系、ルシフェラーゼ、ルシフェリン研究室概要せっかく研究するなら、新しい分野を開拓したかったんですある程度教えたら信じて待つ。それが〝育てる〞ということ牧 当研究室では、生体内深部の可視化を可能にする、ホタル生物発光型標識材料の創製と、希少疾病である急性Tリンパ芽球性白血病(通称:T-ALL)の創薬というふたつのテーマで研究を行なっています。前者に関して補足すると、有機合成の技術を使えば、ホタルが発光するのと同じ原理で人工的な光をつくって、特定の細胞を発光させることが可能になります。その透過性を高めて生体深部まで可視化できれば、癌や再生医療研究の可視化ツールとして活用できるわけです。当研究室では、これまで「アカルミネ®」「トケオニ」、「センパイ」という3つの標識材料を開発、市販化を実現しています。東 私はもうひとつの研究テーマであるT-ALLの創薬研究を東京都医学総合研究所、原孝彦先生のチームと共同で取り組んでいます。学生である自分でも、病気を治す化合物をつくることができるかもしれないという点がこの研究の魅力だと思います。牧 希少疾病というのは、その名の通り患者数の少ない病気です。つまりマーケットが小さいんですね。だから、製薬会社が取り組むにはリスクが高い。でも命の重さを考えれば、誰かがやらなければいけませんよね。取り組むべき価値はあると思っています。東 いつだったか、先生がおっしゃっていた「病気は医者ではなくて技術が治す」という言葉が好きなんです。医師は手術や投薬で患者さんを治すことができるけれど、治療法や薬をつくれれば、それよりもっとたくさんの患者さんを救うことができる。それだけ影響力がある研究に関われていることに、やりがいを感じます。牧 標識材料の方をテーマに選ばなかったのはなぜ?東 そちらにも興味はあったのですが、T-ALLの創薬研究はまだ始まったばかりと聞いたので、せっかく研究するなら新しい分野を開拓したいと思ったんです。牧 そのフロンティアスピリットは素晴らしいですね。自分がこの分野のナンバーワンなんだ、という気概は常に持っていてほしいと思います。それからグローバルな視点も必要です。病気は日本だけのものではないですから、世界中が競争相手になる。東 学部を卒業した後、博士前期課程の間に一度は勉強のために海外に出てみたいと思っています。牧 それがいいね。この研究室では博士課程に進んだ学生には必ずアメリカに留学してもらっています。世界に出て、同年代の研究者たちと自分を比較してきてほしいんです。私もかつて、ドイツでこてんぱんにやられました(笑)。東 初めてこの研究室で過ごした1年間はとても濃密でした。実験は時間もかかるし大変ですが、自分たちの判断で研究を進められる環境なので、楽しく研究に取り組めています。牧 やらされた研究はよくないですからね。ある程度の下地を教えたら、あとは学生を信じて待つ。それが「育てる」ということだと思っています。東 そういえば、先生からやることを指示された記憶がないです。学生のうちに自分で課題を見つけて解決する貴重な経験をさせてもらえて、感謝しています。牧 でも、あまり根を詰めすぎないようにね。研究者は、常に健康な頭と体を維持することが、なにより大切ですから。この分野のナンバーワンという気概を持って、世界を相手に競争してほしい未来を見据えて基盤構築に励む急性Tリンパ芽球性白血病(T-ALL)は、日本での罹患率は約40万人にひとりの希少疾病。ただし、小児では最も発症率が高く再発率も高い。「製品化まで長い年月がかかりますが、自分たちが基盤を築き、将来的に特効薬が市販されることが私の夢です」7

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