[ トップレベルリサーチ Ⅱ ]医学的な診断と治療から害虫制御まで幅広い分野に応用される振動の研究小池 この研究室では、「振動」について多分野での応用研究を行っています。医療分野では医学的治療に定量的データを用いて工学的にアプローチするための計測装置や、デバイス開発が行われています。清水さんの研究はまさにこれですね。清水 私は難聴治療手術を安全に行うための「耳小骨可動性計測装置」を開発しています。伝音難聴の治療方法を決めるためには耳小骨に耳科用探針を当てその動きやすさを測るのですが、現状では医師の手の感覚に頼った診断が行われています。これを数値化して明確な診断基準にする装置を作っているところです。小池 もうすぐ臨床計測が始まり近い将来に実用化される予定ですが、いずれは計測結果の解析をデータベース化することで、最適な治療法を提案し医療現場をサポートするシステムを作りたいですね。また難聴は超高齢社会の大きな課題ですが、不快感や煩雑さから補聴器の利用割合は低い状況です。そこで私の研究室では、超磁歪素子を使って骨振動を直接耳に伝える補聴器を開発しています。病院外来で気軽に頭部皮下に装着できるような超小型化を目指して、他大医学部や企業と連携プロジェクトを進めているところです。一方でこの研究を農業分野にも応用し、捕食者の足音に似せたごくわずかな振動で害虫を制御する振動子の研究を、日本各地の農業研究施設の協力を得て行っています。異分野との繋がりで得る学びと好奇心が世界の医療を支える工学の未来を培う小池 研究室に在籍する12名のうち、清水さんを含めた4名が女性ですね。外部のニーズに応えて始まる応用研究は、世の中にどう貢献できるかのビジョンが最初から見えているので、モチベーションを保ちやすいのではないかな。清水 それに加え研究環境が素晴らしい研究室なので、実験を進めやすいです。週に一度はしっかりと先生とのミーティング時間が設けら小池卓二 教授情報理工学域 Ⅱ類(融合系)計測・制御システムプログラム教授中央、耳小骨可動性計測装置のプローブ(探針)。振動する圧電アクチュエータと力センサが内蔵されている。プローブ先端で骨を触って伝わる力の変化を計測することで、耳小骨を支える筋腱の硬さと耳小骨の動きやすさを数値化して測定できる。工学は現代医療に不可欠の存在人を治すためのもう一つの道です6
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