電気通信大学 大学案内 2021
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写真は全ての色を含む超短パルスレーザーを分光している様子。レーザーの媒質にはチタンサファイア結晶が用いられ、フェムト秒(1000兆分の1秒)のパルス幅を持つ。米田教授の実験室ではさまざまな研究に使用される。科学も産業も支えていく新たなレーザーの開発研究米田 私の研究室では、先端科学の追求から産業技術への応用まで、レーザーに関するテーマを広く扱っています。そのうち半分くらいのテーマは、外部の機関との取り組みです。いわゆる共同研究ですね。企業との研究や、国が動かすプロジェクトへの参加はもちろん、国際研究機関とともに動くプロジェクトもあります。渕さんも外部機関との取り組みを進めていますね。渕 はい。私は茨城県にある大強度陽子加速器施設「J-PARC」での研究を担当しています。直線線形加速器の中を進む水素にレーザーを当てて、荷電変換を起こすんです。そのためには、正確に効率よく当たるレーザーが必要で、形や強度がキレイに均一なレーザーをつくることを目指しています。そういった“理想のレーザー”を作ってほしいというオーダーに応える研究です。米田 渕さんは積極的に研究へ参加してくれますよね。J-PARCだけでなく、兵庫県にあるX線自由電子レーザー施設「SACLA」、大型放射光施設「SPring-8」での研究にも従事していて、日本の主要な加速器すべてに関わっているんじゃない?渕 そうですね。今ではレーザーに関する研究にどっぷりです。研究室の見学時に「ここは、日本一たくさんのレーザーが並んでいる研究室だよ」と聞きました。“日本一”ってすごそう!と興味をもったのがきっかけです。米田 2015年に私の研究室が主となって進めたSACLAの実験では、世界最短波長のX線レーザーをつくることに成功しました。波長の短いX線レーザーができると非常に小さな物質をつぶさに観察できるようになります。例えばタンパク質が薬で変化するときのほんのわずかな動きがわかるようになるんです。原子の構造のより正確な像を捉えると、まだ誰も見たことのない新しい物質の発見へ至るかもしれません。実生活や社会でどう役立つのかといえば、創薬の研究が進んだり、ゆくゆくは人体へX線レーザーを二方向から一度照射するだけで体内の立体像を撮れたりするようにな科学を加速する、一筋の光。米田仁紀研究室TOP-LEVEL RESEARCH[ トップレベルリサーチ Ⅲ  ]米田仁紀 教授情報理工学域 Ⅲ類(理工系)光工学プログラム教授最先端光学の未来に誇りをもって世界を相手に自分らしく学んでもらいたい8

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