電気通信大学 大学案内 2022
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3 橋本研究室はVR/ARを個人が手軽に活用するための技術を研究している。VR/ARを体験しようとすると特別な施設に足を運ぶ必要があったり、特殊なゴーグルを準備したりと個人が楽しむにはまだハードルがあるのが現状だ。この研究室で行われていることは、ディスプレイや平らな壁、ゴーグルの中でしか投影できない、つまり「閉じ込められた映像」を開放し、あらゆる場所に映像を映し出す挑戦だ。それによって現実を拡張するだけでなく、現実そのものを全く別のものに書き換えてしまうことができるようになるという。例えば、空間型拡張現実感の技術では日常にあるモノの上にそのまま映像を投影し、「いつものソファに座りながら、家庭内がSF空間で包まれる」というような視覚体験を生む。ほかにも物体を動かすと、その物体の動きを追跡しながらリアルタイムに映像が投影される動的プロジェクションマッピングの研究にも注力している。動く物体を映像で上書きし、見た目を変えてしまう技術だ。 研究はソフトウェア、ハードウェアともに手を加えてアプローチをしていく。プログラミングで画像の処理方法を変化させ、プロジェクターの構造を解釈し、特殊な映像を投影できるよう作り変えていく。そして実験を通して鮮やかさや奥行きを計測し、実用化へ向けた精度を高めていくのだ。 研究室に所属する渡辺さんのテーマは光源を面対称位置に再結像させる再帰透過光学系を使った「ステルス投影」である。プロジェクターを見えない場所に遮蔽し、より没入感の高い立体像を投影しようと奮闘する。ところが、計算通りの立体像にならず、歪んでしまうという壁にぶつかった。研究完成の手前のことだ。「卒業論文を提出する締切りが迫っていたので焦りましたが、先生からは、ひとつひとつ見直していこうと励まされ、親身に指導をしてくれました」と言う渡辺さん。そして立体像を呈する公式の解釈の一部に誤りがあったことがわかったという。橋本教授は「大学生は研究に使える時間がたくさんある。だからめげずにチャレンジしていってほしい」と伝える。橋本研究室の学生はみな次世代の視覚技術の提示に意欲を燃やす。現実と仮想を融合させた斬新なアイディアがここから具現化していくことになるだろう。日常の中で使えるVR/ARで仮想現実を当たり前の光景にする自在に変化する粘土の上にプロジェクションマッピングをしてみたい!やってみたいことは積極的に研究室はチャンスの宝庫です橋本研究室のプロジェクションマッピングは演劇ともコラボ。劇場に仮想空間を投影しに行くため、マイコン上で開発しポータブルな仕様に学生本人の潜在的なモチベーションを活かすことが橋本教授の指導方針。「また同じ壁にぶつかったときに自分で乗り越えられるように答えではなく考え方を伝える」とし、自立的な姿勢を引き出す── 橋本 直己 教授没入型仮想環境の構築、どこでもディスプレイ技術、次世代型視覚情報提示技術が主な研究課題。新しい視覚表現を誰もがどこでも簡単に活用できる「パーソナル化」を見据えて研究開発に挑む。VR、AR、仮想現実、プロジェクションマッピング、イマーシブ マルチ プロジェクションディスプレイ、等身大インタフェース、広視野立体空中像、ステルス投影、視覚による人間拡張体験、プログラミング、C言語渡辺 大智 さん 情報理工学域 Ⅰ類(情報系) メディア情報学プログラム 4年/千葉県立柏高等学校 出身情報理工学域 Ⅰ類(情報系) メディア情報学プログラム 橋本 直己 教授橋本直己研究室Keywords

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