電気通信大学 大学案内 2024
11/68

液晶構造化したIはどんな機能を持つのか?DNAII生物、化学、物理に関連するDNAの形態と機能の研究The University of Electro-Communications / 11Tanaka Makiko私の研究室では、生体内環境でのDNAの機能探索を大きなテーマとして、「DNA集合体中の電子伝達特性の解明」や、「分子混雑環境におけるDNA集合体の形態の研究」などに取り組んでいます。生命の遺伝情報を保持するDNAは、膨大な生体分子が高密集で夾雑した混雑環境で機能しています。私たちは、このような分子混雑環境モデル中でのDNAの電子伝達特性についての研究を行っています。その中で感銘を受けたのは、DNAの様々な形とその特性の研究をしている過程で確認した「プサイDNAの再発見」です。研究室立ち上げ当初から、DNAは特定の条件下で液晶構造をとる事は判明していましたが、研究室に配属間もない卒研生が、ポリエチレングリコールを高濃度とした塩を含む溶液中の二本鎖DNAを測定したところ、通常より高強度のスペクトルが観察され、ねじれた液晶構造を持つことがわかりました。実験を担当した学生は古い文献Ⅲ類 化学生命工学プログラム 田仲研究室Ⅲ類(理工系)化学生命工学プログラムProfile :奈良県出身。2002年 大阪大学理学部化学科卒業。2004年 大阪大学理学研究科化学専攻博士前期課程修了。2007年 大阪大学工学研究科物質・生命工学専攻博士後期課程修了。日本学術振興会特別研究員、日本大学博士研究員、筑波大学博士研究員、電気通信大学大学院情報理工学研究科助教を経て、2021年より現職。から、これが1971年に報告された「プサイDNA」であることを確認しました。このことをきっかけに、分子混雑環境下で液晶構造をとるDNAの電子伝達特性の研究を進めることになり、後輩の学生たちにより液晶DNAの様々な形態と特性が観察され、予想以上に多彩に機能し生命活動に関わっている可能性が見えてきました。希薄で均一な溶液中でのDNAの電子伝達特性については、すでに膨大な研究事例があり、調べ尽くされたかのように思われた分野でしたが、最初は私も実験を担当した学生も「何かを間違えたのではないか」と考えた「ポリエチレングリコールを高濃度とした塩を含む溶液中でのDNAの液晶化」という実験の結果から、「DNA集合状態の特性の探索」という新たな研究の可能性が生まれた瞬間に立ち会えたというのは得難い体験であり、研究に取り組む醍醐味と言えるでしょう。III田仲 真紀子 准教授

元のページ  ../index.html#11

このブックを見る