電気通信大学 大学案内 2024
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36 /The University of Electro-Communications36 /The University of Electro-Communications岩本:淺野:クラウドコンピューティングやビッグデータ、IoT(モノのインターネット)などの技術が進歩しました。それを利用した多様なサービスが開発され、利用者が増えるにつれ、データの漏えいやプライバシーの侵害というセキュリティ上の問題が多発するようになりました。それらを解決し、先端テクノロジーの安全性を支えるのが暗号技術です。われわれの研究室では、暗号技術について、理論から実装までを研究し、利便性を損なわずに安全性を高める新しい暗号方式の考案や、その安全性の評価を行っています。高校時代に情報セキュリティが関係した事件のニュースを見ました。暗号を研究するのに高度な数学が利用されていることを知り、セキュリティの研究というのは面白そうだと感じ、それを学べる大学を探したところ、電通大がその分野に力を入れていることを知り、入学しました。岩本:電通大は、他大学に先駆けて「セキュリティ情報学プログラム」を立ち上げ、情報社会を支えるインフラとして「情報セキュリティ」について学問的に取り組むことの重要性をアピールし続けていました。おかげで、淺野くんのように「暗号技術」に興味を持つ学生がたくさん入学してくれるようになりました。非常に多くの人がインターネットを利用するようになり、「安全性」と「使いやすさ」を両立させた暗号技術が求められています。学術的、理論的な研究と、利用する方が「使いやすい」暗号技術の開発ということを両輪に、これからも研究を淺野:岩本:進めていきたいと考えています。今取り組んでいるのは、「漏洩耐性暗号」というものです。われわれが普段インターネット上で利用している暗号では、秘密鍵が漏洩したら安全性は破られてしまいますが、「漏洩耐性暗号」は、ある程度の漏洩、例えば半分だけ漏洩するということがあっても、安全性が担保されるという特性のある暗号というものです。最初は、卒業研究のために先生から与えられたテーマでしたが、研究に取り組んでいくうちにどんどん面白くなってきて、博士前期1年2年でもこのテーマで研究を続けてきました。最初は「漏洩しても大丈夫な暗号」というのが、どういうことか全く分からなかったのですが、過去の研究者の知見を利用して考えていくと、漏洩しても安全性が保たれる暗号を作ることができます。そのような仕組みを理解することができて、新しい考え方の「暗号」を作れるというところが、この研究の面白さだと感じています。暗号化の技術や理論はこれまでいくつも開発されましたが、その技術やトレンドは、デジタル技術の進歩や新たなサービスに伴岩本 貢教授セキュリティ情報学プログラム い、これからどんどん変化していくでしょう。これからの情報セキュリティを支えていく淺野君のような学生は、その変化に常に対応していく必要があります。そのためには、これまでの暗号技術が、どのように開発されてきたのか、どのような思想で開発されてきたのかを理解してほしいです。そうすれば、新たなトレンドにも対応していけると思います。新たな時代にふさわしい暗号技術を開発してくれることを期待しています。淺野 京一さんセキュリティ情報学プログラム 博士前期 2年 Professor×StudentDialog変化し続ける技術トレンドに対応できる「考え方」を学んでほしい

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