みなとまち・新潟だからこそ国際物流を研究する意義は大きい【略 歴】新潟県長岡市出身。1990年東京大学大学院工学系研究科修士課程修了。同年に新潟県庁入庁後、ロシア極東派遣研修、(財)環日本海経済研究所(ERINA)派遣研修などを経て、2008年に同研究所に転籍。2023年4月より北東アジア研究所 教授。北東アジア産学連携推進室長。2023年12月より副所長に就任。【専門分野】 ロシア(極東)経済、国際物流、北東アジア地域協力 2023年4月に本学に着任して以降、プロジェクト研究の一環として取り組んでいるのは、「北東アジア地域のコンテナ物流における釜山港の位置づけと今後の展望」というテーマです。 北東アジア地域には、上海港をはじめ世界有数のコンテナ取扱港湾が存在しています。こうした中、釜山港は日本や中国の地方港からのコンテナ貨物を積み替えて世界各地に輸送する中核的な積替港(ハブ港と呼ばれる)として発展してきました。新潟港でも、1990年前後から釜山港との航路の充実が進み、東日本大震災があった2011年には過去最高のコンテナ貨物取扱量を記録しました。 同時に、釜山港の発展に伴って日本の主要港の相対的地位低下が進みました。そこで、日本の国土交通省は2010年に京浜港と阪神港を国際戦略港湾に指定し、内航航路である「国際フィーダー航路」の充実などにより、釜山港へのコンテナ貨物の「流出」を抑制しようとしています。また、2020年の新型コロナ感染拡大に伴う国際物流の混乱により、釜山港で貨物が積み残される事態が発生【担当科目】国際地域学部「北東アジアの政治経済」、国際地域学研究科「現代東アジア特論(ロシア)」したことから、一部の荷主企業には釜山港積替による輸送を忌避する動きも起こりました。 こうした状況を踏まえ、釜山港の将来展望をテーマとして、韓国の政府系研究機関である韓国海洋水産開発研究院との国際共同研究をスタートさせました。釜山港の将来展望は、日本の地方港の将来展望とも密接に関連しています。初歩的な分析からは、日本の中でも瀬戸内海の港湾と日本海側の港湾が、比較的強く釜山港と結びついている姿が見えてきています。今後、航路を運航する船会社や利用者である荷主企業の意向を調査するなどして、重層的に検討していく予定です。 これとは別に、ユーラシア大陸を含む全世界を対象とした国際物流シミュレーションモデルに関する科学研究費助成(科研費)研究プロジェクトにも参加しています。これら研究成果の相互活用を図りつつ、その知見を新潟港へも還元したいと考えています。62新井 洋史教授
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