宇都宮大学広報誌 UUnow 第47号
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UUnow第47号 2018.11.20●12私は主に3つの柱(研究テーマ)について研究を実施しています。それらは、①生体計測、②福祉工学、③数値シミュレーションです。各柱は独立しているのではなく、相互に連携しています。個々について具体例を示しながら説明します。①生体計測―血管の状態を計測するこの柱は大きく2つに分けられます。一つは生体内非侵襲計測で、もう一つは生体運動計測です。前者はヒト内部の情報を非侵襲(体を傷つけない)に計測することを意味します。生体内非侵襲計測では、主として近赤外光を用いた血管可視化技術を用いた計測になります。近赤外光とは、波長が700~1200nmの光で、可視光よりも僅かに波長が長いものです。この光の特徴は生体透過性が良いということです。しかしながら、血液中のヘモグロビンにはその吸収性が高いという特徴もあります。私はこの血管可視化技術を用いて、血管硬さ、血中コレステロール濃度、血管内皮細胞機能を計測する研究を行っています。この中で、血管内皮細胞機能の計測について紹介します。血管内皮細胞の主要な機能は血管運動を引き起こす物質を分泌することです。この機能が低下すると、動脈硬化症を発症するリスクが高いことが知られています。一時的に血流が増加することによって生じる血流依存性血管拡張反応という生理現象があります。そこで、私は血流依存性血管拡張反応を近赤外光血管可視化技術で計測できるのではないかと考えて、その計測を行ってみました。図1に示すように、両手の中指に近赤外光を照射させ、その透過光をカメラで撮影しました。右上腕をカフで5分間圧迫させて、その前後における血管画像を調査しました。その結果、カフ開放後に明らかに画像が暗くなりました。この現象を血管画像の輝度値で示すことによって、定量的に評価することができました。ヒトを計測する—機械工学からのアプローチ—PROFILE2000年、東京工業大学大学院博士後期課程情報理工学研究科情報環境学専攻修了。宇都宮大学工学部助手、同准教授を経て、2016年より現職。博士(工学)。バイオメカニクス、バイオエンジニアリングについての研究に取り組む。工学部機械システム工学科教授 嶋脇 聡工学部 機械システム工学科 教授嶋脇 聡②福祉工学―電動義手を開発するこの柱に関する最初の研究は、平成17~18年度に実施したとちぎコンソーシアム事業の採択課題になります。研究・開発の結果、図2に示すような電動義手を製作することができました。この電動義手の特徴は、①指が屈曲すること、②装着者の手に模した表皮を有すること、③触覚機能を有することです。実際に電動義手を製作してみると、まだまだ十分なものではないことが分かりました。その一つが物をうまく把持することができないことです。そこで、ヒト指腹部の構造に関する研究を行いました。ヒト指腹部にいろいろな形状および荷重で物体を押し付けて、その際の指腹部の変形をMRIにて撮影しました。図3は指の横断面MR画像です。物体形状に沿って指腹部は変形し、特に指腹部内のpulp(液状の物質)が内部を移動していることが分かりました。図1図2

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