③数値シミュレーション―ヒト運動を模擬する主に、マルチボディシミュレーションの手法で、関節運動を解析しました。これらの中で頭頸部の屈曲・伸展運動について紹介します。頭頸部の骨格は、頭骨と7つの頸椎から構成されています。図4に示すように頸椎はほぼ垂直に積み重なりあっていて、隣接する頸椎間で数度(3~8deg)の屈曲を有し、全体として40deg程度屈曲することができます。伸展の場合、60deg程度になります。図4に示す骨格はヒトのCT画像から三次元構築したものです。これらの骨は靭帯で強固に連結されています。図4にある赤い線は筋を表現しています。屈曲の主動筋は6種類、伸展の主動筋は10種類あり、これらはほぼ左右対称に配置されています。今回のシミュレーションでは両動作と両側で210本の筋モデルが使用されています。あと、頸椎間に椎間板モデルとして5本のバネモデルを設置しました。図4に示すように伸展の筋のみを設置して、それらの筋を収縮すると頭部が斜め上方を向くように運動し、逆に屈曲の筋のみを設置すると頭部が斜め下方を向くように運動します。最大屈曲・伸展時の各頸椎間角度を算出し、ヒトデータと比較するとかなり良い一致がみられます。以上のように、生体計測・福祉工学研究室で実施している研究の一部を紹介しました。本研究室は工学部機械システム工学科に所属していて、ロボットなどの機械工学を学びたいという学生さんにはちょっと異質に思うかもしれません。しかしながら、機械を操作するのは人であり、機械から多くの恩恵を受けているのも人です。ヒトを知ることで、その周囲にある機械をより良いものにできると思います。13●UUnow第47号 2018.11.20私私私私裾野を広げて幅を持って勉強する 嶋脇 聡 教授東京農工大学では力学が得意だったので機械工学を選びました。私の父親が水産高校機関科の教師で、船のエンジンを担当する機関士の養成をしていましたので父の影響かな?大学では流体力学だけは全くできませんでした。2年生から専門科目が始まり成績表を見ると流体力学だけが『可』、「こりゃーやばい、流体力学をもっと勉強しないと」と自分で勉強し始めました。すると、そこそこ面白いことが分かり、最終的に流体の研究室に入ったのです。「機械工学」の卒業になるので将来のためにも「機械の知識を身につけなければまずいかな」と、図書館に行って本を探しては自分でも勉強しましたね。サークルは卓球部。当時は自転車が流行っていて、兵庫県の明石で卓球の試合があったので自転車を持って行き、帰りは東京まで4日かけて帰りました。夏でしたから熱くて日焼けがひどくて火傷の薬を塗り、旅館や大学の寮などに泊まりながら帰りました。卓球部では仲間とあちこちへ遊びに行きましたね。卓球は今も続けてやっていますよ。東京農工大で修士を終えて、その後、日立製作所に3年間勤務、流量を計測する装置を開発していました。バブルが終わり、会社は人材の整理などをしていたこともあり辞めて東京工業大学大学院に入りました。大学院では流体力学をメインに研究していました。機械の流れを解析する研究と人の身体の流れを計測する研究があって、最初は機械でしたが先生に勧められて生態の流れの研究を始めました。マスターのときは血管の中の流れでしたが、ドクターのときは鳥の呼吸の流れを研究しました。今の学生は知りたい情報を探すのは比較的楽だと思います。しかし、最初からこれと決めずにその周辺の中で面白そうな興味のある学びをしていくといいですね。最初からピンポイントで決めている学生もいますが、裾野を広げて幅を持って勉強していると、意外に一歩先の周辺でやっていることが将来役に立つ可能性があります。また、私の経験からですが、自分で学ぶほうが身につきますし、自分で見つけ出したことはその後必ず役に立ちますよ。図3図4東京農工大学の4年生の時に友人と(後列左)(「私の学生時代」取材・文/アートセンターサカモト・栃木文化社ビオス編集室)
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