これまで農学と分子生物学との関わりというものは見えづらいところがありましたが、新しい大学院では農学と分子生物学をしっかり結びつけて研究していくプログラムを立ち上げています。動物、植物、微生物領域分け隔てなく研究者が集まっていて、分子農学というプログラムを横断的に取り組み、最先端の研究を現場に活かすことを目標としています。分野の違う視点から見ていくことで新たな発想が生まれ、さらに発展的な研究ができるのではないかと考えています。工農融合という観点では、動物領域ではメダカやミジンコの研究で、植物領域では葉緑体の研究をしている先生が既に光工学の先生と一緒に研究しています。また、新しい研究を創造することを目的に「オプトバイオシンポジウム」が開催され、新しい共同研究の可能性を探る試みも行われています。新たなプログラムではいろいろな分野の教員が様々な研究をしていますので、自分の興味ある研究に出会えるのではないでしょうか。直接携わらなくても、いろいろな研究を容易に身近に見ることができますので、特に科学的好奇心の強い人には魅力があると思います。◆ 学生の声「いま学んでいるのは植物ウイルスですが、遺伝子やDNAを学ぶことが食糧問題など農業に関わる問題解決につながり、社会に貢献できると思うと嬉しく感じる。大学院で専門性を深めたい」(農学部4年 植物病理学研究室)。「研究対象の植物ウイルスは農薬が効かず感染したら対処法がなかったが、遺伝子を扱う分子農学的なアプローチだと、新たな治療法を開発できたりする。いままでのやり方では分からなかったことが、分かるようになるところがおもしろい」(大学院農学研究科修士1年 植物病理学研究室)5●UUnow第47号 2018.11.20栃木県は光関係の企業が多数立地し、光学製品の工業出荷額が全国トップです。こうした状況を背景に、宇都宮大学に光学技術を体系的に研究するオプティクス教育研究センターが設立され、光工学の世界的拠点へと発展しています。光工学プログラムには、「世界でここしかない研究ができる」という強み、魅力があります。例えば私の研究室ではSF映画に出てくるような「空中ディスプレイ」の研究をしています。何もないはずの空中に映像が浮かびます。この技術を使って今までディスプレイが置けなかったような空間にディスプレイを置くことができます。例えば、トンネルの中に空気の流れの妨げにならないような看板をつくれるようになります。この業界、2040年には3兆5千億円規模の大きな市場になることが予想されています。世界でトップを走る空中ディスプレイの研究が、この研究室で行われています。実用化を目指すだけではなく、新しいディスプレイ技術の生物学への応用についても生物学者との共同研究が進められています。大学院の改組によって工農の連携と融合がさらに進むと期待されています。◆ 学生の声「学部時代、農学はまったく視野になかったが、光工学を専門的に学ぶようになって光と生物の関わりを知った。そこがおもしろくて、バイオに興味を持つ学生は多いと思う。工農融合で興味や知識の幅が広がるという期待がある」(大学院先端光工学専攻修士2年 山本研究室)光工学プログラム山本 裕紹 准教授分子農学プログラム煉谷 裕太朗 助教LEDライトの光を「再帰反射シート」と呼ばれるシートを使って空中に結像させることで立体的に見える(写真左が山本准教授)水中に映像をつくり、その映像に対してメダカがどのような行動をするのか観察し、メダカの生態を解明する試みが行われていますウイルスの検出実験の結果について学生とディスカッション実験室で研究室員との集合写真(写真後列右が煉谷助教)
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