宇都宮大学広報誌 UUnow 第45号
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UUnow第45号 2018.4.20●12■電力開発から研究へ私は、電力開発に関わってきた経験を活かして、再生可能エネルギー(再エネ)や環境影響評価、プロジェクトマネジメントに関する研究をしています。電力会社や建設コンサルタント会社では、国内外の電力開発の仕事をし、その成果の一部を論文にまとめ、発表してきました。海外ではインドネシアやミャンマー、ベトナムなど東南アジア諸国に長期滞在しました。電力開発の内、特に水力発電所で、計画から設計、施工管理、維持管理の各段階に関わってきました。水力建設プロジェクトは、工事用道路や事務所建設から始まり、ダムや水路トンネル、サージタンク、発電所建屋など数多くの建造物をサブプロジェクトとして構築する一方で、自然・社会環境にも配慮しなければなりません。総合工学に基づき、サブプロジェクトを緻密に、インターアクティブに作り上げてプロジェクトを完成させます。国内外で、工学に基づく技術は同じですが、維持管理に配慮した適正な技術や国際契約、環境アセスメントなどには大きな違いがあります。水力や再エネなどの開発プロジェクトを成功させるには、エンジニアリングと同様に、高度なマネジメントが求められます。エンジニアやプロジェクト・マネジャーとしての経験を宇都宮大学での教育や研究、社会貢献に還元できるように、自分自身で構築し直し、実践しているところです。■研究課題現在、研究では、以下の3つの課題に取り組んでいます。1.水道管内夾雑物の水質への影響2.再生可能エネルギーの環境への影響3.社会基盤整備に民間資本を活用する方法課題1は、栃木県佐野市の建設会社が水道管内の夾雑(堆積・付着)物を洗浄する工法を開発しており、その効果を検証するための工学的研究に関わることが契機となりました。日本の水道水は蛇口エンジニアリングを学術に還元するための道を探るPROFILE1985年、東京工業大学 土木工学専攻修士課程修了。2012年、立命館大学 工学博士。1985年から中部電力株式会社で水力発電所の土木技術を担当。退職後、1992年から株式会社ニュージェックで国内外の電力開発の調査研究・計画・設計・建設マネジメントに従事。2015年、執行役員辞職後、現職に至る。地域デザイン科学部社会基盤デザイン学科山岡 暁教授地域デザイン科学部 社会基盤デザイン学科山岡 暁教授から直接飲めるので、世界的にも水質は高い状況です。しかし、水道管内に無機物が堆積しているため、赤水や黒水が発生することもあります。それらの化学組成・物性や発生メカニズム、水質への影響は十分に解明されていません。この影響は、国内でも将来問題になる可能性があります。また、途上国では、夾雑物の生成が日本よりも進んでいると予想されます。私の調査結果では、東南アジア諸国の都市部の上水道は戦前に構築されたものも多く、浄水場や水道管の維持管理は十分ではありません。一方で、途上国では自然・社会環境が原水の水質に悪影響を与えています。インドネシアでは、都市部の水道で夾雑物が上水の水質を低下させている現象を確認できました。今後、先に述べた解明されていない領域の研究を進めていく予定です。課題2は、国内で開発が進む再エネの環境影響です。国内ではミャンマー・日本外交関係樹立60周年記念事業講演(2014年7月)

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