UUnow第48号 2019.4.20●12■ガバナンスと協働の視点行政学・地方自治におけるガバナンス(統治、共治、協治)や協働の視点を重視しています。とりわけ協治といった場合、自治体や地域社会、国や国際社会が抱えるいろいろな課題を行政や政府だけではなく、住民や企業、NPO、NGOなどの多様な主体が協力し合って解決していくことを意味します。ですから、対象は公的な価値を追求するあらゆる政策、施策、事業の領域に及びます。身近な児童公園のあり方や自治会活動から、自治体による公共施設の設置運営、国による社会保障など多岐にわたります。それらが展開する次元も近隣、地域コミュニティ、地区、市町村、複数の市町村を包含する広域行政、都道府県、国、国際レベルにまで至ります。私の関心の対象は、縦横無尽かつ森羅万象に及んでいるといっても過言ではありません。■現場を重視する指導教授との出会いところが、研究を深めそれを洗練させるためには、絞り込んだ専門領域の設定が不可欠です。私の場合、大学院に進学した際、ごみ問題を対象に徹底的に現場を重視する指導教授に出会った経験が非常に大きかったのです。環境問題がまだ社会科学の学問の対象として注目されていなかった時代に、指導教授は自らごみ収集車に乗り込み、果敢に現場の問題に向き合っていたのです。自らの学問を開拓するスタンスに刺激を受けた私は、自分はスポーツ行政研究をやろうと決めたのでした。■最初は1行も書けなかったしかし、一口にスポーツ行政といっても、何をすればいいのかわからず、何も書けませんでした。そこで、自治体の担当者のところへ行って、話を聞き資料をもらうことから私の研究はスタートしたのでした。■「窮鼠猫を噛む」で受験し博士後期課程へ手書きの修士論文「自治体経営をめぐる議論とスポーツ行政」の提出後は、惰性で博士後期課程をあきらめなければ、道は拓ける!ースポーツ世界を対象とした研究ーPROFILE1991年、早稲田大学大学院政治学研究科博士課程満期退学。同大助手を経て、1993年に宇都宮大学に赴任。2003年から同教授。博士(政治学)。栃木県行政改革推進委員会会長、かぬま多文化共生プラン推進委員会会長など、県や県内市町における多くの審議会活動に従事。近年はスポーツを通じた震災復興や2020年東京五輪の研究に力を入れている。地域デザイン科学部コミュニティデザイン学科教授 中村祐司地域デザイン科学部 コミュニティデザイン学科 中村 祐司教授受験しましたが、問題意識も希薄で、また第二外国語のドイツ語に難のあった私は、あえなく門前払い(不合格)となりました。高校で社会科を教えながら大学院に通っていたため、高校勤務と研究の両立に苦しんでいるうちに、博士後期課程の入試が数カ月後に迫っていたのです。追い詰められた私は、「窮鼠猫を噛む」ように死に物狂いでドイツ語の勉強をしました。優秀な仲間との勉強会に救われ、何とか博士後期課程へ入ることができました。■スポーツ世界を研究する醍醐味一口にスポーツの世界といっても、それは地域コミュニティにおけるスポーツクラブから、国家によるスポーツ
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