宇都宮大学広報誌 UUnow 第48号
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UUnow第48号 2019.4.20●14本学バイオサイエンス教育研究センターの岡本昌憲助教(41)ら国際共同研究チームは、少ない水でも生育可能な節水型耐乾性コムギの開発に世界で初めて成功したことを国際学術雑誌「NaturePlants」にオンラインで公開(2019年2月8日/英国時間)しました。 岡本助教はコムギに含まれる耐乾性に関与するタンパク質の一種アブシシン酸(ABA)受容体に着目し、遺伝子組み換えによってABA受容体を多く蓄積するコムギを開発。水を与えず乾燥した環境下で栽培したところ、葉からの蒸散量が抑制され、高い耐乾性を示しました。コムギの生産量は気候変動による干ばつや砂漠化が生産の課題となっています。アフリカ諸国をはじめとする発展途上国では経済成長に伴いコムギの需要が高まっていますが、将来的にはコムギ不足が懸念されています。節水型耐乾性コムギの研究開発により乾燥地域でのコムギ栽培が可能になることで、食糧の安定供給に貢献することが期待されています。岡本助教は「今回開発したコムギは、遺伝子組み換え技術により、コムギが本来持っているABA受容体タンパク質を多く蓄積させたもので、安全性は高いと考えられますが、社会的受容性を考慮し、野生の遺伝資源から節水型耐乾性コムギを見出して利用する必要があると考えています。現在、その候補系統を見出しており、今後、10年をかけて、世界の乾燥地で利用可能な実用品種開発に向けた研究を、海外の研究機関と共同で行っていく予定です」と話しています。干ばつに強く、水を節約して育つコムギの開発に成功—乾燥地での食糧増産や安定供給に期待—宇大スピリット=「3C精神」で未来を開拓しよう!〜本学の取り組みにみるSDGs〜SDGs(Sustainable Development Goal[持続可能な開発目標])は、持続可能な世界の実現に向けて国連により定められたもので、加盟国193カ国が2030年までの達成を目指しています。こうした目標は、あらゆる組織や個人がそれぞれの立場で取り組まなければ達成できないのは当然です。「宇都宮大学SDGs事例集」は、宇都宮大学が取り組んでいる様々な教育研究活動を、SDGsの達成に向けた観点で取りまとめ、可視化したものです。この冊子によって、広く宇都宮大学の活動を知っていただくと共に、目標達成に向けて多くの皆さんとの連携が生まれることを期待しています。「宇都宮大学SDGs事例集」を公開しました少ない水でも枯れずに種子生産が可能なコムギ(右)と通常のコムギ持続可能な開発目標(SDGs)の17の目標は大きく3つのグループに分類することができます。誰もが共感できるが、理解・実現が難しいSDGsを宇大の研究例を通じて俯瞰できます。本学内の実験栽培ハウスで節水型耐乾性コムギの説明をする岡本助教〇「宇都宮大学SDGs事例集」とは?

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