宇都宮大学広報誌 UUnow 第48号
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5●UUnow第48号 2019.4.20 CG 的な特長を感性工学的な手法で解明するところから始めました。質感の感性評価、生理計測(保温性)、生地の素材をみる力学特性計測などから感性、心理、生理、物理的な特性の関係性を明らかにして結城紬の質感をデータベース化しました。それによって、どうつくれば、どんな風合いのものになるかを推定することができます。結城紬に興味関心を持ってもらうための消費者向けの機能や生産工程をサポートする機能を持たせた「結城紬質感伝達システム」を構築しました。ここで、コンピュータグラフィックスが専門の森先生に加わっていただきました。森結城紬をコンピュータ上でシミュレーションして再現するシステムです。消費者側からみると、自分の好きな色柄で結城紬の着物を仕立てたらどうなるかを事前にシミュレーションして確認できるのが特長です。CGで表現された着物をライブカメラ映像に重ね合わせることで、その場で着ているような感覚を得ることができます。Googleマップ、ストリートビューと連携して世界中どこでも好きな場所で結城紬を着ている雰囲気を再現することもできます。また、このシステムは制作支援としても使えます。着物は反物を8つのパーツに裁断し、それを縫い合わせることで仕立てます。どこでどう切って、どう縫い合わせれば柄の配置が良くなるかということを職人さんは経験や知識に基づいて手作業でやられるのですが、とても大変な作業です。このシステムは実際に職人さんが仕立てるように、着る人の体型に合わせた時に絵柄が一番良くなるように計算してベストの仕立てパターンを得ることができます。佐々木石田学長がお召しになっている大学ロゴをデザインした着物(図表参照)は、このシステムの活用例です。こうした絵羽柄は糸のロスが多いので産地ではやりません。今回はシステムの精度を検証するために産地とタイアップして、あえて非典型的なデザインに挑戦しました。―今後の展開、展望は石川小山市が「おやま本場結城紬クラフト館」にて結城紬を実際に着て、まち歩きを楽しんでもらうというサービスを行っていますが、そこにこのシステムが導入されています。今後、インターネットにつなぐことで結城紬の魅力を世界に発信していくことを予定しています。佐々木私たちの最終目標は日本の紬文化を世界に発信していくことです。結城にとどまらず紬文化全体として発展していかないといけない。地域の文化を文理融合の視点で見直すきっかけになればという思いもあります。地域の人たちが心地良く、質の高い生活をしていくために感性情報工学が役に立てばと願っています。今後もこのシステムの利活用の研究を進めていきますが、心理学や観光学など様々な分野の先生方に参画していただきたいと思っています。感性の研究領域を宇大の研究コアとして発展させることで、「知の拠点」として地域貢献をより充実させたいと考えています。分野・文理融合による地域連携  感性情報工学*今回プロジェクトで試作した本学のロゴを使用したオリジナルデザインの結城紬は、峰キャンパスのUUプラザ1階に展示してあります。皆様ぜひご覧ください。

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