宇都宮大学広報誌 UUnow 第49号
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●工学部ではものをつくる、プログラムを書くといったことが目的化されていますが、実際にはその先に人間がいます。そのことは意外と工学部の教育から抜け落ちているので、あらためて人間が工学の中心にあるということをふまえ、「人間とは何か」を知る、つまり工学部の目で見た人間像を教える授業を立ち上げました。今やAIなどで知能を拡張するだけでなく、人体を拡張する、遺伝子を操作するということもできるようになってきました。それらが可能になっているにもかかわらず、私たちはまだ人間について多くを知りません。また、私たちの細胞は分子や原子によってできていますが、その一部は外国産の食物由来だったりもするわけで、私たちの体をつくる分子や原子は常に地球環境中を循環しています。そうした広い視点から、物質としての人間の成り立ちを俯瞰するのが生命人間科学の目標です。● 授業概要教工 Academic English ReadingAcademic English Reading国際学部国際学部 学術英語講読学術英語講読農学部 応用生命化学科 生物化学 Ⅰ理論と実践を往還す(教育実践高度化専教職大学院工学部 応用化学科化学プロセス農学部農業経済学科 会計学 国際学国際学国際学国際学 生命人間科学生命人間科学    感性科学入門    感性科学入門工学部工学部 生命人間科学生命人間科学    感性科学入門    感性科学入門工学部工学部● 学生から●今までは生物は生物、物理は物理、と分かれた授業しかありませんでした。それらが融合した話、相互関係であったり、物理と生物の間の話を聞けたことが面白かったです。テーマが同じことでも、2人の先生は視点が違うのでそういう見方もあるのかと驚きました。異分野がつながっているということがわかる授業です。工学の対象は人間なので、より人間を知らなくては意味のあるものがつくれないということがわかりました。●人体はとてもシステマチックであり、工学と結びついていることがわかる授業です。感性科学入門は、私たちが今まであまり焦点を当ててこなかった感性について、視覚・聴覚・触覚などの実験・シミュレーションを合わせながら授業を行うところが面白いと思いました。人間は聞いている状況と見ている状況が合致することによってどのような音なのかを認識しており、認識が環境に左右されやすいということがわかりました。●人を構造から知るという生命人間科学の授業は、工学は常に人間のためにあるということを教えてくれました。自分がやっていることは社会にとって本当に役に立つのか、デメリットも含めてきちんとものを考えることが工学においては重要です。対象である人間に目を向けるということが、情報技術の発達によって可能になってきました。俗に言われる「機械が人間を支配する」という怖いイメージを変えてくれる授業でした。● 教員から本講義は、工学部改組に伴う新設科目で、人間の生命、感性をキーワードに、工学やものづくりの基盤となる考え方を教育する授業です。大庭亨教授が生命人間科学、石川智治准教授が感性科学入門を担当します。これらの講義は全8回で1年生全員(340名程度)が受ける必修科目です。受講生は半数(170名程度)に分かれ、連続するコマで交互にこれらの講義を受けます。UUnow第49号 2019.11.20●12専門分野:生体関連化学、生物有機化学、ナノバイオサイエンス授業科目:学部/生命人間科学、有機スペクトル化学ほか:大学院/分子機能科学、共創コーチング特論ほか●生命人間科学では人間を物質やものと捉えますが、感性科学入門では人間をひとつのシステムと捉えます。つまり、人間に、物理的刺激(入力)が与えられ、それにより感覚や感性が生じ、それが心理及び生理反応や行動(出力)として観察されると考えます。 例えば、色は感覚量(心理量)であり、それ自体は物理的に存在しません。特定の波長の光が、目の中の網膜内の3つの錐体で反応して、ある色と判断されます。したがって、物理的刺激が同じでも、個々の反応や感性の相違により、色の判断やそれに付随する印象が異なることがあります。その相違の原因を探究して理解することで、個々人にカスタマイズしたものづくりへの新たな知見が得られます。そのための視座の理解が、感性科学入門の醍醐味です。専門分野:感性情報学・ソフトコンピューティング授業科目:学部/創成工学実践、感性科学入門、プログラミング演習Ⅰ、感性情報工学ほか:大学院/感性情報処理システム、 現代を見通すー生命と感性の科学、複合感覚情報処理特論工学部 基盤工学科1年谷田部萌同 安里成海同 田鹿菜保大庭亨 教授石川智治 准教授

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