宇都宮大学広報誌 UUnow 第52号
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UUnow第52号 2021.4.20●12私は高分子という「大きな分子」を使った材料の開発に取り組んでいます。人間の体はタンパク質などの高分子からできています。このように人間を含めて生物は、高分子を利用して生きています。また、我々が生活する上でも今や高分子は欠かすことのできない材料です。 例えば、体温の保持や、個性を表現するために、我々が身につける服の多くは「高分子」でできた繊維が多く使われています。他にも様々なプラスチック製品が我々の生活を助けています。家の中を見回すだけでも非常に多くの高分子を発見することができると思います。何故、こんなにも高分子が利用されているかというと、それは大きな分子である「高分子」は小さな分子には発揮できない強度や安定性、その他の面白い性質を持っているからです。私の研究室では、この高分子の構造を設計して新しい高分子を作り出し、もっと良い性能、これまでになかった機能を持った高分子を使った材料を開発する研究を行っています。そして、研究で開発された高分子材料を実用化し、私たちの未来の生活を豊かなものにする目標を持って研究を行っています。今回、私の研究室で開発しているいくつかの材料を紹介させていただきます。■人間の皮膚のように傷を治す材料人間や生物は擦り傷などを自動的に治癒する能力を持っています。このように傷を自動的に治す自己修復性を持った材料をこれまでに開発してきました。自己修復材料は、材料の寿命を大幅に伸ばすことができるため、最近非常に注目されている材料の一つです。例えば、割れても破片が元の通りにくっついて治るガラスや、擦り傷を自動的に修復できるような塗料などを作り出すことができます。人間の皮膚の代わりにこのような自己修復材料を使う、「人工皮膚」のような使い方も考えられます。これまでに様々な方式で自己修復する材料を当研究室は開発してきました。■生体組織を貼り合わせることもできるゼリー状接着剤今日、様々なものを貼り合わせるために、いろいろな種類の接着大きな分子、「高分子」を使った材料の魅力PROFILE九州大学卒業、九州大学大学院修了(修士)、大阪大学大学院修了(博士(理学))。高分子化学や超分子化学に関する研究を行っている。2017年から宇都宮大学工学部で「高分子化学」などの授業を担当。工学部助教 為末真吾工学部 助教為末 真吾剤が開発され、利用されています。私たちの研究室では、生体組織も安定して貼り合わせることができる接着剤や、光や熱などの刺激を利用して、好きなタイミングで剥がすことのできるゼリー状の接着剤を開発しています。他にもとても強い接着力を持った接着材料の開発にも成功しています。優れた接着剤の開発は安定かつ簡便な機械や建物、家具などの作製にとどまりません。傷口を接着剤で貼り合わせて閉じることで、抜糸のいらない、「生体組織間の縫合」にも利用することができます。■色々な刺激に応答する刺激応答性材料ナマコは、体が柔らかい、海などに生息する生物です。しかし、ナマコは人が持ち上げたりして、ストレスが加わると体を硬くして身を守ろうとします。このようなブラックライトで光るゼリー状高分子材料

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