宇都宮大学広報誌 UUnow 第52号
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13●UUnow第52号 2021.4.20私私私私私私私私刺激に応答する性質を持った材料を、高分子を使って作り出す研究を行っています。例えば紫外線に当たると溶けて、目に見える光を照射すると逆に固まるような高分子材料の開発に成功しています。 このような刺激に応答して溶けたり固まったりする材料は、例えば薬剤を包み込むカプセルの素材としての利用が考えられます。薬剤を包みこんだあと、目に見える光を照射することでカプセルを形成し、薬剤が唾液などで溶け出すのを防ぐことができます。そして人間がカプセルを飲み込んだ後、刺激を与えることで、高分子でできたカプセルを目的の場所で溶かし、薬剤を放出するような使い方(ドラッグデリバリーシステム)ができるようになります。これ以外にも光などの刺激で伸び縮みする材料を使って、人間の筋肉を人工的に再現した「人工筋肉」のような材料の作製も行っています。このような材料は、実際に人間の体内で人工筋肉として組み込んで使う利用方法も考えられ良き恩師と研究仲間が学生時代の最高の出会い       為末 真吾(「私の学生時代」取材・文/アートセンターサカモト・栃木文化社ビオス編集室)九州大学工学部物質科学工学科に入学しました。ノーベル賞の候補だった新海征治先生が在職していたことや、私の地元であることなどが入学理由です。新海先生からは、1年次の講義から修士課程修了までご指導いただくことができました。研究に興味を持たせてくれた大変面倒見の良い先生で、私も可愛がっていただきました。しっかりと指導してくださったのが嬉しかったですね。研究室の仲間とは長く一緒に学び飲んで語って、ハードな研究の日々でも充実していました。入学時からの友人も研究室に残り、研究好きな仲間とお互いに支え合いました。良い恩師と研究仲間が学生時代の最高の出会いとなり、今も交流は続いています。修士課程修了後の就職は迷っていました。学会の発表と企業への就職の最終面接が重なってしまったのですが、学会発表を選び研究の道へ進む決心をしました。私の修士課程修了と同時期に新海先生が退官されたので、博士課程は大阪大学大学院に進みました。大阪も面白いかな?食べ物も美味しいかな?などと思いながら新たな地へ飛び出しました。 博士課程は実績がなければ認められませんので、論文を有名な雑誌に投稿したり、海外の研究発表にも積極的に参加したりして研究を積み上げました。学会のポスター発表を見て「論文読んだよ」などと他国の研究者から声をかけていただき、出会った方々と親しく交流しました。研究を通して、オランダ、オーストラリア、アメリカなど海外に多くの仲間ができました。博士課程修了後、理化学研究所に勤務しました。自分の能力を試される所で大変でしたが、一番力が付いた時期かもしれません。国立の優れた研究所で研究ができたのは良い経験だったと思っています。大学は若い学生たちと共に研究する楽しさがあります。私の研究室は教員に相談しやすくお互いに話しかけやすい雰囲気を考えて、家具も明るいカラーで統一しています。学生には教員に研究をやらされるのではなくて、自分で考えて研究を達成できるようにバックアップしたいと思います。私のようにアカデミックな世界に進む学生が出てくれば嬉しいですし、卒業生と企業などで出会って共同研究などができるのもいいなと思っています。大学院時代。ハワイでの学会にてポスター発表(2010年)ますし、柔らかいロボット(ソフトロボットと呼ばれ、最近開発が盛んになってきた)のパーツとして利用も考えられます。これらのように刺激に応答する高分子材料は、医学を中心として工業的にも農業的にも利用価値の高い材料であると言えます。これまで述べてきましたように、私の研究室では高分子という大きな分子を使った材料開発を行っています。今後は環境問題などの解決に向けたよりクリーンで高い性能を持った高分子材料の開発を行っていきたいと考えています。高分子の大きさを測定する機械(GPC)高分子を合成するスペース材料の強度を測定する諸機械

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