宇都宮大学 研究シーズ集 2022.04
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健康志向が広まる昨今、栄養に対する関心も高まり、さまざまな物質の栄養機能に関する膨大な情報がマスメディアやインターネットを介して提供されています。私たちのグループが研究の対象としているアミノ酸も一時期過剰な注目を浴びました。しかし、アミノ酸は現在注目されている多くの物質とは異なり、新たに出現してきた物質ではなく、非常に古くからよく知られてきた生命の源となる栄養成分です。アミノ酸は、体組織の主たる成分であると同時に生体機能に重要な役割を有しているタンパク質の構成成分であると認識されていますが、実はアミノ酸は細胞内や血漿などに遊離した形でも存在し、この遊離した単体のアミノ酸がそれぞれ独自の生理的機能をもって膨大な役割を担っていることが明らかになってきました。特に健康に関わる分野において、アミノ酸の新規機能性が続々と発見されており、今やいくつかのアミノ酸は、単なる「素材」ではなく生体調節に深く関与する「調節因子」として認識されています。私たちは、アミノ酸のなかでも分岐鎖アミノ酸(バリン、ロイシン、イソロイシンの総称)と呼ばれるアミノ酸に注目して、生化学、分子生物学手法を用いてその生体調節機構を解析しています。これまでの研究で、ロイシンが筋肉のタンパク質合成を刺激し分解を抑制する機能を有すること、またイソロイシンが糖代謝を調節する機能を有することを明らかにしました。現在は、これらの機能をより詳細に調べる基礎研究と平行して、これらの機能の医療、食品分野への応用利用の研究も進めています。教育・研究活動の紹介昨今の健康ブームのなかで過剰な注目を浴びた健康食品や食品成分の中には、生体を用いた適正な機能評価が行われていないものが数多くあります。食品や食品成分の機能評価研究においては動物科学の知識を背景とした栄養学的なアプローチが必須です。食品や食品成分についてその物質としての特性を食品化学的な研究アプローチでいくら詳しく調べても、その物質が生体内で実際どのように振る舞うかを的確に予想することは不可能です。私たちは常に生理的条件を考慮し、機能評価系として動物個体を用い、解析手段として分子生物学的手法を駆使して、アミノ酸の生体調節機能の解明を目指しています。今後の展望アミノ酸は本来的に生体成分であるという特質から、ホメオスタシスや自然治癒力の維持に穏やかにかつ安全に作用し、生活の質(QOL)を高める素材としての優れた特性を持っています。従ってアミノ酸は、運動、疾病、老化など生活のあらゆる場面で、極めて安全性の高い次世代型生体調節因子として利用可能であると考え、これからも研究を展開していきます。社会貢献等食品企業と連携して、「栄養補助食品」、「いちごを用いた生フルーツ黒酢」や「いちごビール」等も作りました。医師、薬剤師、保健師、栄養士、一般市民、小中高生、食品企業、製薬企業等向けの講演を承っております。(特徴と強み等)(社会活動特許等取得状況産学連携・技術移転の対応等)栄養生理化学・アミノ酸の生理機能の解明・栄養素による体タンパク質合成制御の機構解析・脳活動情報に基づいたいちごの味に関する解析タンパク質合成,翻訳制御,アミノ酸,シグナル伝達日本アミノ酸学会、日本栄養・食糧学会、日本農芸化学会、日本畜産学会、AmericanPhysiologicalSociety、AmericanSocietyforNutrition食品の最も重要な機能は「おいしさ」だと思います。データサイエンスを活用した「いちご」のおいしさの解析研究も始めました。よしざわふみあき2022年1月更新TEL:028-649-5160分野研究テーマキーワード所属学会等特記事項URL: -Mail: fumiaki[at]cc.utsunomiya-u.ac.jp研究概要SDGs事例農学部教授理事(学務・社会共創担当)・副学長)吉澤史昭生物資源科学科栄養制御学研究室

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