農業活動が自然環境へ大きなインパクトを与えている現況に対応して、農地及び土壌の適切な管理・保全技術を科学的根拠に基づいて確立させることを目指しています。沖縄地方における赤土流出とは、農地の表土が激しい降雨によって侵食を受け、サンゴ等の生態系に悪影響を与えているという現象です。農地における土壌保全型農業に関する研究や河川や海域における負荷物質循環に関する研究を実施してきました。成果の一例として、沖縄県石垣島における流域において、水や土砂の動態を評価する数値シミュレーションを実施し、その現況を評価するとともに、勾配修正等の土木的対策や不耕起栽培等の営農的対策を想定した土砂流出量の削減効果を評価しました(右上図)。更に、福島県での放射性物質の汚染など、国内外における同様の土壌流出問題に開発した技術等を応用しています。教育・研究活動の紹介~課題解決型の研究スタイル~研究のアプローチの方法として、フィールドにおける現地観測、室内実験・分析、解析モデルを用いた数値シミュレーションを主としており、地域で生じている問題の解決を目指した技術開発を常に心がけて研究を遂行しています。そのため、自然環境に関するモニタリング技術や水・物質循環に関する数値シミュレーション技術に関して多くの知見を有しているのが特徴です。今後の展望~企業、行政、そして地域住民との連携~地域で生じている問題の解決のためには、研究者による活動のみでは不十分であり、企業、行政、そして地域住民との連携を図りながら取り組むことが不可欠です。沖縄における赤土流出問題を例に挙げると、地域の観光資源であるサンゴの持続的な保全・再生を行うためには、農業だけではなく社会も環境保全型にシフトさせる必要があります(右下図)。赤土の主な発生源である農地の対策にかかる費用や労力などを社会全体でサポートする体制作りが必要なのです。環境問題には複雑な相互関係やジレンマがあり、科学的技術だけでは解決できない場合が多いので、今後、研究者以外の機関とも連携を深めつつ研究・教育・地域貢献活動に励みたいと思っております。(特徴と強み等)土壌侵食,農地・土壌保全,水・物質動態・沖縄における赤土流出問題に関する研究・放射性物質で汚染された地域の復興に関する研究・熱帯泥炭湿地の保全と温室効果ガスの放出抑制など自然環境に関する野外モニタリング技術,土壌や水に関する室内分析,室内実験(降雨実験など),水・物質循環に関する数値シミュレーション・農業農村工学会,土木学会,農業気象学会など・降雨シミュレータを用いて豪雨でも土壌を保全する室内実験を実施・気候変動に伴う水,土,農作物の影響を予測します.おおさわかずとし2018年8月更新TEL:028-649-5488分野研究テーマキーワード所属学会等特記事項URL: http://agri.mine.utsunomiya-u.ac.jp/hpj/deptj/env/lab/land/index.htmlMail: osawa[at]cc.utsunomiya-u.ac.jp研究概要~自然環境と人間社会の共存のための科学~SDGs事例農業環境工学科農地・土壌工学研究室農学部教授大澤和敏
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