日本のスギ・ヒノキ人工林は、第二次世界大戦後の復興期に短時間に急激なスピードで造成され、一種のヒステリックな土地利用の痕跡を国土に残しました。六十数年を経て都市と農山村双方が、造成されたこれら人工林管理・利用を考えざるをえない局面に立たされています。農山村は、単なる資源供給地ではなくそこに定住する人々の生活空間であり、森林は単なる木材と大気と環境を提供する資源ではなく、農山村と人々の歴史を刻んだ記録媒体です(図1)。私共は、農山村に定住し続けた人々に学び、地域に残された記憶媒体(文書、土地利用、家屋、そして人工林)をもとに、次の世代のための、地域のための森林政策、制度設計とはどのようなものか、追求しています。教育・研究活動の紹介多摩川、荒川、利根川、那珂川水系を大動脈とし展開した木材流通は江戸・東京を中心とするネットワークを形成し、17世紀以来400年間にわたる森林資源の採取・育成・保全と利用・消費との関係を作り上げました。中でも北関東地域は、東京近郊の他の林業地が相対的に生産力を落とす中、近世以降の江戸・東京大都市圏にとって重要な林産物供給拠点であり続けました。既開発国において首都圏と木材供給地がこのような地理的近さで数百年間資源保続性を有し21世紀を迎えた例は世界的に稀で、先進7カ国で日本だけに見られる特色です。栃木県内には、林業史的に異なる3つの型の林業地域があり、近世以降、近代、戦後に極めて独特の戦略的位置づけを持って森林・林業・林産業を展開させ、現時点の課題に向かい合っています。それぞれの地域の持つ強みそのものが、この地に研究の拠点を持つ者の強みでもあります。今後の展望戦後造成された森林資源が主伐期を迎え次の再生産のサイクルをどのように持続させていくのか、農山村での世代交代が進む中、森林資源管理が次世代へどのように継承されていくのか、全国的な調査と連携しつつ、国、都道府県、市町村、それぞれのレベルでの制度設計を現場レベルで検証していきます。社会貢献等市民講座、グループ研修会の講師、各種審議会の委員などを通して、現場から多くを学んでいます。自ら得た知見を現場へフィードバックできるように努めて参ります。(特徴と強み等)(社会活動特許等取得状況産学連携・技術移転の対応等)森林政策、流域管理、農林業史・人工林の再生産と農山村の定住条件・流域林業史・森林・林業・林産業構造論・欧州(仏国)森林管理制度森林開発の史的展開,人工林管理と農山村社会の発展,農山村女性への応援歌日本森林学会、林業経済学会(理事)、林業経済研究所(理事)農山村で頑張ってきた先人達への敬意を研究に活かします。やまもとみほ図1農山村の「ライフコース」の例2018年8月更新TEL:028-649-5534分野研究テーマキーワード所属学会等特記事項URL: -Mail: mihoyama@cc.utsunomiya-u.ac.jp研究概要SDGs事例森林科学科森林政策学研究室農学部教授山本美穂
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