宇都宮大学広報誌 UUnow 第56号
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アルゴリズムの力で最適化問題に挑むn-1) !/2私の研究室では、進化計算などのメタ戦略と呼ばれる、最適化問題を効率的に解くための手法に関する研究を行っています。また、アカハライモリのゲノム・遺伝子解析に関する研究も行っています。       理論の分野だけではなく、機械設計、■最適化問題とは最適化問題とは、与えられた条件の中で、いろいろな選択肢の中から一番良い、またはできるだけ良いものを選ぶ問題です。例えば身近な問題では、出発地から目的地までの最適経路を求める問題や学校の時間割作成問題などが挙げられます。有名な問題として巡回セールスマン問題があります。これは図Ⅰのように出発点から決められたすべての都市を一度ずつ訪問して出発点に戻ってくるときに、移動距離が最小となる経路を探索する問題です。経路の数は都市数をnとすると、あります。例えば都市数が5の時はだと約18万、20都市だと約6京通りにもなってしまいます。このようにnが増えるとその組み合わせの数が爆発的に増えてしまい、どんなに計算機が速くなってもすべての組み合わせを調べるのは不可能となってしまいます。このような問題に対して、できるだけ効率的に良い解を探索する手法を考えるのが最適化アルゴリズムの研究となります。最適化問題は、単にアルゴリズム人工知能、システム制御など様々な分野に存在する非常に重要な問題です。企業においても、製品開発やシステム開発で、最適化問題を解かなければならない事例が多数存在します。以上のように最適化問題には実用的な問題が多数存在し、工学、経済学をはじめとする様々な分野で研究が行われています。このような最適化問題のほとんどが、巡回セールスマン問題のような解法が確立されていないNP困難と呼ばれる問題に分類されます。本研究室では、このような最適化問題に対 通りして進化計算と呼ばれる、生物の遺伝・進化の過程に発想を得た計算手法を用いて最適解を求める手法について研究しています。           ■進化計算(進化計算とは、生物の進化の過程や行為、自然現象等をヒントにして開発された最適化問題を解くためのアルゴリズムの総称で、人工知能の分野の一つとなっています。代表的なものに遺伝的アルゴリズムがあります。これは、選択淘汰や突然変異といった生物進化の原理に着想を得た手法で、生物が遺伝子をもとに、交叉、突然変異によって新しい世代が形成され、弱いものが淘汰されていくという、生物の進化のメカニズムを最適化手法に応用したものです。このような進化計算手法を様々な最適化問題に適用し、従来のアルゴルズムを改良していくことにより、更に効率的に良い解を探索する手法について研究しています。■超大規模問題への挑戦最適化問題の研究では、巡回セールスマン問題のような基本的な問題がいくつもあります。これらの問題にはベンチマーク問題と呼ばれるアルゴリズムの性能を評価するための問題例が用意されており、ベンチマーク問題を用いた性能評価が行われてきました。一方で、ベンチマーク問題には存在しない、さらに大規模な問題に対しては研究が行われてきませんでした。これは、最初に述べた問題サイズが大きくなると組み合Computation()lutiEvoonary工学部准教授 外山 史��� ���12通りの経路が存在します。10都市PROFILE2000年、宇都宮大学大学院工学研究科博士課程修了。同年、同大工学部助手。現在、同大准教授。博士(工学)。進化計算などのソフトコンピューティングに関する研究に従事。図Ⅰ:巡回セールスマン問題工学部 准教授外山 史UUnow第56号 2023.4.20●12

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