ticわせの数が爆発的に増え、進化計算を用いた手法が使えなくなるためでした。本研究室では、従来にはない超大規模な問題に挑戦し、新たなアルゴリズムを開発することを目的として研究を行っています。これまで研究されてきた組み合わせの、10の30000乗倍以上の超大規模な組み合わせの中から効率的に良い解を探索するアルゴリズムを研究しています。こうした超大規模な問題を扱うためには、写真1のような高メモリを搭載したサーバと呼ばれる計算機が必要となるため、これらサーバを用いてアルゴリズムの開発を行っています。■アカハライモリのゲノム・遺伝子解析私が行ってきた最適化アルゴリズムの研究の論文がきっかけとなって、筑波大学の千葉親文教授から、アカハライモリのゲノム・遺伝子解析に関する共同研究の依頼がありました。ヒトのゲノムサイズ(総塩基数)は約30億対ですが、アカハライモリのゲノムは約370億対と推定されており、超大規模なデータを扱う必要があるため私に声がかかりました。アカハライモリは図Ⅱのように、腹に赤い模様がある日本固有種で皆さんも見たことがあるかもしれません。イモリは幼生の時期だけではなく、変態後のおとなになってからも、手「New足や尾、アゴ、目、心臓、脳までも傷跡を残さずに治すことができる「再生のチャンピオン」と呼ばれています。胎児や幼生の時に再生することができる動物は多くいますが、おとなになってからもこれほどまでの再生能力を持った動物はイモリしかいません。イモリ研究グループは、「イモリの再生現象の全体像を解明して、人の医療に応用する」という壮大な目標を持って研究しています。本研究室は、ゲノムや遺伝子の解析を行っているため、直接イモリに触れることはなく、遺伝子やゲノムのデータ(ATGCの文字列)のみを扱っています。裏方的な担当ですが、これらの情報解析なくして、研究を進めることはできません。本研究室では、図ⅡのようなアカハライモリのデータベースIMORIを作成し公開しています。こうしたアカハライモリの遺伝子のデータベースは、イモリの再生に関わる新たな遺伝子います。1」の発見にもつながって図Ⅱ:アカハライモリデータベースIMORI研究室の仲間とスキーに(左端が学生時代の外山准教授。右端は東海林名誉教授)写真Ⅰ:高メモリ計算サーバ13●UUnow第56号 2023.4.20父は北海道大学の大型計算機センター(現情報基盤センター)の技術職員で、子どものころから計算機に馴染みがあったこともあって情報工学系への進学を希望し、宇大に進みました。札幌の実家を離れ、いろいろな経験をしたいという思いもありました。宇都宮は交通の便も良く住み心地の良いところです。なにより、北海道で育った私には、毎朝の雪かきがないのが魅力でした。学生時代は4年間、学生寮での生活。誰かの部屋に集まってワイワイやって、サークルのようでした。入学したのは1991(平成3)年。当時は昔ながらの2人部屋。1年ごとに部屋替えもありました。試験前は寮の集会室で分からないところを聞き合いながら仲間と夜遅くまで勉強しました。研究室では、現在名誉教授の東海林健二先生に指導を仰ぎました。手書き文字を認識するシステムのデモンストレーションに興味を持ったのですが、先生から「手書き文字の研究は先がない」と新しい分野を勧められました。既に研究成果がある程度まとまっていましたし、将来性を見越していたのかもしれません。そのときは残念に思いましたが、それから進化計算と画像処理を組み合わせた研究に取り組み、今につながっています。やってみると面白いことが分かりました。進化計算は、新幹線の先端の細長い形状にも関係し、物流システムでも最適手順を見つけるなど応用の広い研究です。 研究室の仲間と遊びに行ったのはいい思い出です。リーダーシップをとる学生がいて、研究とのメリハリがありました。福島へ日帰りでスキーに行ったり、夏に旅行したり。東海林先生のお宅にみんなでお邪魔したこともあります。何でも言い合える風通しの良い研究室でした。進んだ道は違いますが、県内企業に勤める仲間とは今でもよく会います。博士後期課程に進むとき、就職するかどうかで迷いもありましたが、やはり研究が面白いし、父には博士号取得を強く勧められました。研究者、大学教員の道に進み、何年かして、イモリを研究する筑波大学・千葉親文教授から共同研究に誘われます。相談に乗ってくれた東海林先生からは、専門外の研究でも積極的に挑戦するよう助言をいただきました。イモリの再生能力について特有の遺伝子を発見した共同研究で、ゲノム解析に情報学的なアプローチでサポートし、少しは貢献できたかなと思っています。学生の皆さんには、広い視野を持って面白いことを捜してほしいですね。希望以外のことに取り組むことになったとしても自分に役立つことが必ずあります。常にアンテナを張り、それを見つけてスキルアップしてほしいと思います。学生寮、研究室の仲間は生涯の友/思わぬところにも面白い発見が 外山 史私私私私
元のページ ../index.html#13