宇都宮大学広報誌 UUnow 第57号
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Ex. Ex. Ex(.楽曲のテーマや情景についての言及は有意に少なくなることが分かりました。 この結果から、親しみのないジャンルの音楽作品が描く世界に入っていくことは中高生にとって少し難しいこと、鑑賞前の歌詞情報はそんな音楽の世界を楽しむ手助けになることなどが示唆されます。ただし、事前の情報を受けずに豊かな情景を音楽からイメージして書いてくれた一部の生徒さんもいました。事前情報がこうした素晴らしい想像力を制約することのないように、うまく活用しながら音楽を楽しむことが大事です。■様々な専門家との共同研究近年でもこれらのテーマに興味を持ちつつ、様々な共同研究も実施しています。共同教育学部には心理学のみならず様々な分野の専門家がいますので、とても恵まれた環境だと感じます。たとえば昨年度は、卒論指導学生と音楽分野の先生と一緒に、外国語のクラシック音楽を鑑賞する際、それに先駆けて歌詞の意味を解説する場合とそうでない場合とで、楽曲そのものの鑑賞の仕方やイメージが変わるかどうかという実験を、中高生を対象に実施しました。結果の一部を紹介すると、歌詞と曲調が不一致の(歌詞は恋愛の喜びをうたっているけれども暗い曲調の)楽曲を鑑賞する際、事前に歌詞の意味を解説されていたグループは、解説されなかったグループと比べ、その後の楽曲を鑑賞する際に体験した「高揚感」や「親しみやすさ」の得点が有意に高くなりました。また、鑑賞の際に感じたことを書いてもらうと、事前に歌詞解説を受けていないグループは、歌手の声低い男の人の声)や歌詞の言語(外国語の歌詞が聞こえた)、楽曲のテンポ( ゆっくりした曲)などにより多く言及している一方、私私私私文字表現におけるジに古印体が使われる例もあり、その違和感に興味を持ちました。「ひなまつり」や「遊園地」という言葉を、不気味なタイポグラフィやかわいらしいタイポグラフィで参加者に示した後に、顕在記憶と潜在記憶をテストするというような実験を行いました。また、活字だけではなく声色の違いによる印象や記憶に関する実験も行いました。筑波大学大学院で所属した研究室では、潜在記憶や人工物の使いやすさに関する研究が行われていました。指導教員がこの分野の第一人者で、研究の楽しさ、難しさを教えていただきました。研究室のゼミでは週に1回、全員で議論をします。研究の進捗状況を発表し、教員のアドバイスやゼミ仲間との意見交換によって、研究者としての自分が磨き上げられていきました。自分の中でモヤモヤしている部分を言葉にすることで課題も見えてきます。研究成果も、一人で作り上げたものではなく、教員や仲間との議論があって成し得たものだと思います。研究以外の取り組みで印象に残っているのは、学習院大学で所属していた演劇サークルでの活動です。私は照明を担当していました。みんなで協力して、一から舞台作品を作り上げていく達成感が今でも忘れられません。印象一致文字+音声表現における印象一致文字・音声表現の複合効果研究3※モダリティ:各感覚器官を通して 得られる、それぞれに固有な情報 の種類のこと※プライミング:先行して呈示され る刺激が後続の刺激の処理を促進 すること音声表現における印象一致学習院大学を卒業し、筑波大学大学院へ進学しました。特に大学院での5年間は、実験を重ねながら学会発表の準備に追われる日々を送りました。街中の看板や商品のパッケージに注目したことをきっかけに、タイポグラフィと言葉の関係性の研究を始めました。活字のタイポグラフィには、明朝体やポップ体、筆文字など様々な種類があります。元々は印鑑の書体として用いられていた古印体が今ではホラータイポグラフィとして活用されています。一方で、昔ながらの雰囲気を出すために、書店の看板や伝統的なお菓子のパッケーモダリティの違いプライミングを指標とした研究研究4視覚世界パラダイム13●UUnow第57号 2023.10.20ベルリンにて開催された35th Annual Meeting of the Cognitive Science Society(CogSci2013)の参加風景指標の違い恩師やゼミ仲間との議論が刺激に   宮代 こずゑ文字表現研究1音声表現研究2私私私私私私

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