農業用水,とくに水田のかんがい用水は流域のなかで循環して何度も再利用されることで,流域での水利用が成立しています。そして,水の循環とともに多くの物質も流域のなかを水とともに移動しています。こうした水循環における水や物質の移動量の定量化のため,長靴を履いた水田内外の調査,水田のもつ多面的機能に関する研究,モデルを用いたシミュレーションなどを行っています。また,農業用水の循環を考えるときには,農業用水の水管理が重要な役割を担っています。こうした視点からの研究も行っています。教育・研究活動の紹介①栃木県・茨城県を流下する鬼怒川と小貝川は,農業用水を介して密接に繋がっています。この流域において,農業用水の循環を定量的に示すことができる流域水循環モデルを開発しました。このモデルは河川流量だけでなく,地下水位の変動も比較的良好に再現することができます。②地表に降った雨の一部は蒸発散として大気に戻り,一部は河川に到達し,海へと流れていきます。蒸発散量の推定精度を向上させるため,とくに長波放射の推定に着目した研究を行っています。世界中で広く使用されている有効長波放射量の推定式が日本では精度がよくないことを示しました。③水田における窒素浄化機能のモデル化,水田における土砂収支・土砂動態について宇都宮や石垣島の水田において観測しました。今後の展望農業の水利用は,水路などの施設システム,それを管理する社会システムおよび情報システムにより成立しています。近年,社会システムが弱体化する一方,情報システムを比較的安価に導入できるようになってきました。現在の状況に即した水利用の秩序に関する研究についても進めていきたいと考えています。社会貢献等これまでに行政機関と連携した鬼怒川や小貝川における水循環の検討に多く携わってきました。水にまつわる課題は,地域の地理的,社会的状況を反映します。解決したい課題がある際には,お気軽にご相談ください。(特徴と強み等)(社会活動特許等取得状況産学連携・技術移転の対応等)水利環境工学・農業用水を中心とした流域水循環・物質循環に関する研究・蒸発散量推定精度向上のための有効長波放射量推定式に関する研究・農業用水の管理・利用に関する研究水田,農業水利,分布型流出モデル,蒸発散量推定,純放射,水利組織,鬼怒川,小貝川農業農村工学会,土木学会,水文・水資源学会放射収支計,全有機炭素計,液体クロマトグラフィまついひろゆき2024年2月更新TEL:028-649-8638分野研究テーマキーワード所属学会等特記事項URL: https://agri.mine.utsunomiya-u.ac.jp/hpj/deptj/env/lab/wq/Mail: matsuih[at]cc.utsunomiya-u.ac.jp研究概要SDGs事例農業環境工学科農学部教授松井宏之
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