一つは、食堂運営委託サービスを展開するイートランド株式会社(本社・宇都宮市)との連携。洗浄、乾燥したイチゴの葉を細かく刻み、混ぜ込んだシフォンケーキやクッキーなどのスイーツを開発しました。連携のきっかけはREALで年一回行われる全プロジェクトが顔を合わせる全体会議。イートランドは2022年7月からプロジェクトを開始しており(下表の13)それぞれのプロジェクトの進捗状況を報告する中で考え方が一致。同社栄養管理室の堂山和子室長は「食品を無駄にしない考え方は、わが社のモットーです。捨てられるものを活用することが素晴らしいと思いました。また、栄養の観点からみても、果実に栄養を送る茎や葉には栄養が豊富なんです」。イチゴの葉にはビタミンC、ポリフェノール類の抗酸化性成分が含まれています。「イチゴは栃木県を代表する農産物ですが、その葉は捨てられています。何とか活用できないかと有用成分の抽出の研究を進めてきましたが、この事業ではイチゴの葉そのものを使用します」と、佐藤教授。何度も試作を重ね、試食した人の意見をフィードバックしながら商品を開発した同社栄養管理室の小野岳さんは「私たちの業界とは違った分野と連携することで新たな価値が生まれました」と手応えを感じています。商品を販売する際のロゴマークも公募で決定し、REAL発のスイーツがこの春いよいよ誕生します。佐藤教授は、イチゴの葉から抽出した成分を使い、プラスチック素材の開発も進めています。高機能フィルム製品を製造するサンプラスチック株式会社(本社・那須塩原市)や栃木県と連携した事業で、超臨界二酸化炭素や高温高圧水を使った環境負荷のない抽出方法でイチゴの葉から有用成分を抽出し、それを混ぜ込んだプラスチック素材を製造。この素材で作った袋で、内容物を安定して保存できるかどうか性能、効果を確認している段階です。課題は大量生産、スケールアップの方法。高温高圧の状態で抽出するため機械の大型化や、コストの問題なども。しかし、水や二酸化炭素による抽出は環境負荷がなく、身体にも安全。SDGSに配慮した方法として注目されています。廃棄物から資源へ。今後も様々な活用法を探り、栃木県産バイオマス資源として実用化を進めていきます。各プロジェクトの進捗状況を評価し、不十分ならプロジェクトの見直し、もしくは解散もあります。しかし、プロジェクトを立ち上げ活動すること自体がチャレンジであり、その精神を評価したい。うまくいかない理由を受け止め、レベル4達成の困難さを理解する。実用化・商品化の達成とプロジェクトの見直し・解散、双方をきちんと評価することが、次につながると考えています。※超臨界二酸化炭素:臨界温度および臨界圧力以上に保持された二酸化炭素の流体状態■REAL発! 環境にも人にも優しいスイーツを■廃棄されるものから新たなプラスチックを開発3●UUnow第58号 2024.4.20左から、小野岳さん、佐藤教授、堂山和子さん。お互いの技術をリスペクトし製品化を実現UURE PRODUCTSロゴマーク写真左:クッキー(パッケージのデザインは変更になる可能性があります)右上:シフォンケーキイチゴ葉を用いたREALの商品や広報活動のロゴ。イチゴの葉を食べて、動くロボットのキャラクターのイメージにて描かれました。■ REALで進行中のプロジェクトとプロジェクトリーダー 一覧(2024年2月時点)1 農業支援ロボット 工学部 尾崎 功一2 パーソナルモビリティロボット 工学部 星野 智史3 μマニピュレータによる細胞操作 工学部 玉田 洋介4 ICTを利用した農業の高度化5 食の見える化 工学部 石川 智治6 空中ディスプレイ工学部 山本 裕紹7 物流支援ロボットシステム 工学部 Renato Miyagusuku8 周年栽培植物工場 農学部 黒倉 健9 ガレージとちぎ10 見守り支援システム11 無人店舗及び店内作業の省人化システム中野冷機(株) 花村 英樹12 イチゴまるごと活用技術13 給食の未来創造のデジタル化14 ネイチャートレイルの高度利用化農学部 柏嵜 勝(株)アオキシンテック 青木 圭太自治医大・看護/(株)ナーステックラボ 川上 勝工学部 佐藤 剛史イートランド(株) 堂山 和子地域デザイン科学部 髙橋 俊守
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