宇都宮大学広報誌 UUnow 第58号
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空中ディスプレイSociety5SF映画に描かれてきたような空中に浮遊する映像。山本裕紹教授は再帰反射を利用した空中結像技術を研究開発しました。空中ディスプレイは、2040年度には全世界で3兆5千億円規模の大きな市場になることが予想され、自動車、表示、エンターテインメントなどの領域での実用化が期待されています。山本教授が研究開発に取り組んでいる空中ディスプレイは、照らされた光を元の方向に帰るように反射させる「再帰反射素子」を使った技術です。この技術の最大の特長は、眼鏡やゴーグルなどを装着せずに、誰が見ても、どこから見ても同じ位置に、何もない空中に浮遊する映像が見えることです。この技術は、エンタメ業界においても注目されています。昨年、最新の空中映像の技術と日本の伝統芸能である能を融合させた新しい舞台が山本教授の技術協力で実現。「能の世界観がよりリアルに捉えられる」との評価を得ました。コロナ禍の中、非接触により感染リスクを低減する技術として注目されたのが、空中ディスプレイとユーザーの動きを検出するセンシングデバイスを組み合わせた「タッチレス空中操作パネル」です。ATMの端末やエレベーターのボタンなど、不特定多数が操作する端末への実用化が進められています。山本教授も木目調のパネルの上に浮かぶ空中映像をタッチパネルのように操作できる「ステルス空中インターフェース」の実用化を目指して電子部品メーカーと共同研究を進めています。自動車業界では運転手が視線を前方に向けたままタッチ操作できる技術に、また表示の分野では、トンネルや地下鉄のデジタルサイネージへの活用が期待されています。未来社会の姿として提唱されている「0」は「サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)の高度な融合」を目指しています。山本教授は「空中インターフェースは、まさにそのサイバー空間とフィジカル空間の融合に必要な界面活性剤の役割を果たす」と空中ディスプレイの可能性を指摘し、人と情報機器や機械が違和感なく調和する社会への貢献を目指します。SF映画の世界が現実に。目の前に映像が浮かび上がる!■伝統芸能・エンタメで進む実用化■非接触で動く。空間に浮遊する操作パネル■誰もが便利に。新しい社会へ.「宇〜太」の空中結像。山本裕紹教授(左から2番目)と研究室の学生たち東京の電子部品メーカーと共同開発した「ステルス空中インターフェース」立体的に浮かび上がる能面UUnow第58号 2024.4.20●4REALproject6

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