農業支援ロボット尾崎功一教授による「農業支援ロボット」プロジェクトの原点は、20年前に研究開発した「イチゴ収穫ロボット」にあります。その開発で得たコア技術を活用し、農業支援に重点を置いた移動ロボットの社会実装を目指してREALのプロジェクト1として始動しました。尾崎教授らが立ち上げた大学発ベンチャー「アイ・イート株式会社」(現REACT株式会社)が実用化・商品化を達成したのは、汎用4輪駆動搬送ロボットです(写真1)。このロボットは収穫者に追従走行し、収穫した果実の搬送や薬剤散布などの作業支援を実現。作業者は両手を自由に使って作業することができます。また、ロボットの上面はフラットになっており、収穫物や農業資材、機能モジュールを簡単に搭載可能です。ロボットの自律移動技術として、複数の制御手法を状態に合わせて切り替える「マルチ・ナビゲーター・システム」と呼ぶ技術が採用されています。最先端の技術とイチゴ収穫ロボットの開発から培ってきた既存の技術をうまく組み合わせた独自技術で、低コスト化に寄与します。「早くからロボット開発に携わってきましたから、ロボットを動かすノウハウの蓄積があります。それが社会実装につなげる上で強みになっています」と尾崎教授は話します。尾崎教授がこれから目指すのは、「スイッチをポンと押せばロボットが勝手に収穫して戻ってくる、完全自律型のイチゴ収穫ロボット」、そして低価格化です。社会実装に向けた改良を重ね、現在、実証実験が進められています(写真2)。近年、農業従事者の減少や高齢化などによる労働力不足は深刻な問題となっており、農業従事者の平均年齢は70歳に迫ります。「『さすがに70で重いものは持てない。ロボットがないと本当に困るよ』と言われるように、社会が変わってきています」と尾崎教授。開発者がその場にいなくても安定して自律走行が可能なロボットへの期待が高まる中、農業支援ロボットの挑戦は続きます。大学発ベンチャーで「汎用4輪駆動搬送ロボット」を実用化■独自技術を詰め込んだ移動ロボットの実用化■農業の未来を支える5●UUnow第58号 2024.4.20東京・羽田イノベーションシティでロボットのデモ・展示を行った尾崎功一教授と研究室の学生たち写真2:イチゴ収穫ロボットこのロボットは,本実証課題 農林水産省「スマート農業実証プロジェクト(戦略的スマート農業技術の実証・実装)(課題番号:5G4B1、課題名:サキホコレ!ローカル5Gとリアルメタバースを活用した秋田県産地モデル実証)」(事業主体:国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構)の支援により実施されました。写真1:自律走行のデモの様子。4輪駆動で段差を物ともせず、雨や泥にも負けないタフな車体REALproject1
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