6▼多文化共生と「公共圏」活躍する在学生と卒業生情報発信国際学部長 中村 真2022年2月に、ロシアがウクライナに侵攻し、戦争状態が続いています。パンデミックに加え、さまざまな紛争により社会が不安定化し、先を見通すことがますます難しくなっています。このような困難な状況に直面すると、私たちは不安になり、そのような心理状態を和らげる情報や指導者を求めます。いわゆる「陰謀論」のように、このような状況をもたらした原因を断定的に示して、シンプルに現状を説明してくれる言説や理論を信じたり、大丈夫だと言ってくれる人に頼りたくなったりします。しかし、これでよいのでしょうか。このような状況に対応するために、私たちにできることは何でしょうか。一つの可能性として、「公共圏」と呼ばれる討論の場の形成について考えてみましょう。この用語は、哲学や社会科学の分野でさまざまな意味で使われていますが、多様な意見を交換し、それを集約して合意を形成する場と説明することができます。そこでは、あらゆる人が対等に参加と発言の権利を保障されるとともに、自らの考えを明示的に言語化し、他の参加者を説得することが求められます。先を見通せない状況で、根拠のない言説に頼るのではなく、議論を通して対応を考えるということです。これは、理想化された討論の場と言えると思いますが、このような場を探求し、創造することが、国際学部の教育研究の重要な役割の一つと考えています。国際学部が教育研究の柱として掲げる、多文化共生や多様性、持続可能性のような理念は、いずれも、公共圏の形成を支えるとともに、そのような場において議論し、検討されるべきテーマと言えるでしょう。国際学部の学生たちは、さまざまな関心をもち、積極的に学修し、活動しています。このパンフレットには、学生個人やグループの活動が紹介されていますが、2022年度には、特筆すべき活躍がありました。そのうちの2つをご紹介しましょう。一つは、赤十字国際委員会駐日代表部主催の国際人道法模擬裁判とロールプレイの国内予選会での活躍です。国際学部藤井研究室の大学院生と学部生で構成されたチームは、両大会で準優勝を勝ち取るとともに、その中の一人が、最優秀弁論賞を獲得しました。国際法を専門的に学んでいる他大学法学部の学生を抑えての快挙です。参加学生は国連や国際NGOにてインターン生として採用され、自身のキャリア形成につなげて活躍しています。もう一つは、大学入学を機にフランス語を学び始めた国際学部生の一人が、DELF-B2というフランス国民教育省認定のフランス語の国際的な検定試験(英語では英検準1級レベルに相当)に合格したことです。この資格は生涯有効で、フランスの大学に登録するための語学試験を免除されることになります。これらは、潜在能力の高い国際学部生たちが、自らの研鑽と国際学部での教育を活かして、成果に結びつけた好例です。ここで、卒業生の特徴についても紹介しておきます。国際学部の卒業生は、あらゆる職業に就いています。国際機関で活躍する人もいれば、日本酒や味噌のメーカーといった日本の一地域の食品製造業において、国際学部での学びを活かし、商品の世界展開という重要な役割を担っている卒業生たちもいます。今や、あらゆる分野でグローバル化に対応することが求められ、国際学部の学びの特徴である、学際性に基づく多面的な知識や柔軟な思考、複数の外国語運用能力、グローバルな実践力が重視されているのです。在学生や卒業生の活躍、特徴的な教育プログラム、国際学部附属多文化公共圏センターの活動など、さまざまな情報を発信するため、このパンフレットに加え、学部HP(https://www.kokusai.utsunomiya-u.ac.jp/)や多文化公共圏センターHP(https://cmps.utsunomiya-u.ac.jp/)を刷新しました。とくに、学部HPバーチャルオープンキャンパスのページでは、研究室紹介とオンラインセミナーを加え、国際学部でどのような教育と研究が行われているかを、ゼミに所属している学生たちの声とともに紹介しています。国際学部の教育研究を、在学生の声や授業を通じて確かめてください。また、多文化公共圏センターHPでは、多文化公共圏フォーラムとして様々な活動を紹介するとともに、イベント参加の申し込みもできます。定期的にご確認いただき、イベントにもふるってご参加ください。ところで、国際学部は、2024年度に設置30周年を迎えます。節目の年を前に、これまでの成果を振り返り、今後のさらなる発展に結びつけられるよう、現在準備を進めているところです。近日中に、学部HPで30周年記念イベントに関するページを作り、随時ご報告いたします。最後に、国際学部で学びたい、教員と共同研究をしたい、卒業生を採用したいなど、さまざまな観点で国際学部に興味関心をお持ちのみなさま、是非、このパンフレットと国際学部HPをご覧いただき、私たちにご連絡ください。国際学部の魅力:多文化共生と「公共圏」国際学部に関心をお持ちの皆様へ
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