山梨県立大学広報誌 Souffle Vol.13
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私は多額の奨学金を返済しなければいけなかったので、仕事を選んでいられませんでした。非常勤講師の頃は福祉の現場や単発のアルバイト等、色々な仕事をしていました。そんな中で、私の授業を聴かれた先生から「もう少し福祉教育でやってみたら」と言っていただき、「いただいた仕事だからこなさなければ」と思い続け今に至ります。したがって、今の自分の仕事は、まず、自分の生活のためという基盤があります。本来、仕事とは自分がいちばんしたいことをできるのが理想なのですが、私の場合は、今も人からお話をいただけている立場なのだから、自分の思い以上に誰かからの依頼や期待に応えていくことが大切なのではないかと思うようになりました。結果的に自分がたまたま勉強や研究、追及してきたことが誰かのために少しでも役立ったり、それで人間関係がひろがるのであれば、それは尊い経験だと思います。よって、私自身、微力ながらでも地道に誰かのお力添えができればいいのかなと、最近は思えるようになりました。安の古本です。福祉の本は、制度関係の本だ   と最新のものが大事ですが、一方で、援助技術論といった福祉のマインドを根底にした実践論みたいなものは、古典的な本でもずっと使えるんですね。だから特に私の「自己覚知」という研究テーマ上、古本でも十分いけるんです。な本を本格的に読みだしたのは実践現場に行った後からなんですね。それで思った事は、「実践をしてからの学び」っていうのも非常にわかりやすくて大切だということ。学生の頃は理論ばかり言われても想像が追いつかない状況でした。けれど、実践を経てからもう一回教科書を読むと、「ああこのことだったんだ」というふうに繋がってくる。だから福祉で忘れてはいけない事は、「理論があっての実践」と解釈しがちですけど、究極的には多くの活字化されている理論のうちでも、特に援助技術論的な実践論は、実践を理論にしたものなんですよね。だから、まずは「実践としてあったものを理論にしていった」という事実と感覚を忘れてはいけないと思うんで私が自前で買ってきた研究室の本は全て格昔は漫画や小説ばかり読んでいて、専門的すか。――大学で教えようと思ったきっかけは何で――先生と本について聞かせてください。深掘りというテーマに沿って、授業とは少し違った大津先生の側面をお見せします!プロフィール:大津雅之(おおつ・まさゆき)大学卒業後、1998年より神奈川県内の知的障がい者分野のワーカー勤務を経て、2003年に大学院に入学。大学院在学中も非常勤講師とともに、京都府内の福祉実践にも従事。2011年4月より山梨県立大学に勤務。今日では、「自己覚知」を研究テーマとしている関係で、障がい者分野のワーカーを中心としたピア・グループ・スーパービジョンの導入に関する研究や事例検討会でのスーパーバイザー・アドバイザーを担っている。22大津先生に聞いてみた

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