山梨大学 大学案内 2025
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202514大村智博士は1974年、静岡県伊東市川奈の土壌から新種の放線菌を分離した。そして米国メルク社との共同研究において、マウスに寄生する線虫の駆除活性を有する新規物質エバーメクチンを生産することを見出した。1979年、放線菌の新種をStreptomyces avermitilisとして命名するとともに、抗寄生虫物質をエバーメクチンAvermectinと命名して発表した。その後、エバーメクチンのジヒドロ誘導体であるイベルメクチンIvermectinを開発。これをもとにしたヒト用製剤メクチザンMectizanは、WHO等によるアフリカや中南米における熱帯病撲滅プログラムの中で、1987年からオンコセルカ症やリンパ系フィラリア症の特効薬として無償提供され、毎年約4億人もが服用している。これにより既に中南米ではオンコセルカ症が撲滅されている。イベルメクチンはまた、動物の駆虫薬としても今日まで世界で最も多く使われ、食糧増産等に多大な貢献をしている。大村智博士は、エバーメクチンの他にもこれまで約500種類を超える新規天然生理活性物質を発見している。これらの中には、抗癌の先駆物質として、また研究用試薬として生命現象の解明に多大な寄与をしているスタウロスポリンStaurosporineやラクタシスチンLactacystinなどがある。2015年、大村智博士は「線虫感染症の新しい治療法の発見」によりノーベル医学・生理学賞を受賞した。山梨大学の卒業生である大村智博士は、2015年にノーベル医学・生理学賞を受賞されました。これは大村博士による新種の放線菌の発見と、その生産する抗寄生虫抗生物質エバーメクチン・イベルメクチンの発見による感染症への治療法に関する研究の業績が高く評価されたものです。大村博士は、1935年に山梨県北巨摩郡神山村(現・韮崎市)に生まれ、1954年に山梨大学学芸学部(現・教育学部)に入学、1958年にご卒業されました。本学では、大村博士のご功績を称え、ノーベル医学・生理学賞を受賞された2015年10月に山梨大学特別栄誉博士の称号を授与しました。Streptomyces avermitilis NBRC14893T(MA-4680株)の走査型電顕像―成熟すると菌糸の先端がらせん上となり胞子連鎖が形成される―イベルメクチン無償供与先のガーナにて子供たちに囲まれる大村智博士(2004年)ノーベル賞受賞「抗寄生虫薬の発見」大村 智 (おおむら さとし)山梨県韮崎市出身1958年 山梨大学 学芸学部※自然科学科 卒業1963年 山梨大学 工学部発酵生産学科 文部教官助手2006年 山梨大学 名誉顧問2015年 ノーベル医学・生理学賞2015年 山梨大学 特別栄誉博士※学芸学部:現在の教育学部大村智博士と山梨大学

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